データベース化事業

1. 「データベース 近代日本の日記」(β版)のご紹介

2. 「近代日本の日記帳」コレクションのご紹介

 

1. 「データベース 近代日本の日記」(β版)のご紹介

明治から現代までの日記を、執筆期間、記入者氏名、ジェンダー、収録書名から検索できる「データベース 近代日本の日記」(β版)を公開しました。以下に公開までの経緯と、現状のデータベースの概要についてご紹介いたします。

2006年に急逝された福田秀一氏(国文学研究資料館名誉教授・国際基督教大学元教授)は、数千点にのぼる日記関連資料を蒐集されました。そのうち、2006年までに出版された幕末期以降の活字化日記を対象として、2017年度よりデータベース化事業を開始しました。この計画は、私(田中祐介)が代表者を務める科学研究費助成事業「活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の「日記文化」の実態解明」(若手研究B、2017-2019)、および分担者を務める「日記資料に基づく高度成長期日本民衆のデモクラシー意識の特徴と変容に関する研究」(代表吉見義明、基盤研究B、2015-2018)の一環として実現しました。

第一弾として、最もボリュームがあるだろう「戦場・銃後」をテーマとして日記を抽出し、一件ずつデータを取りました。データ化作業は若手研究者の力を借り、当初は断続的に、のち継続的に進め、テーマは「高度経済成長から現代」へと移り、2019年10月時点で約850件のデータを備えるに至りました。データ化作業に協力してくださった全ての皆さまに御礼申し上げます。

並行して、研究プロジェクト「近代日本の日記文化と自己表象」のウェブサイトへの検索システムの導入を計画し、志良堂正史さん(プログラマー、「手帳類」プロジェクト代表、https://techorui.jp)のご協力により、実装する運びとなりました。試験運転期間を経て、このたび「データベース 近代日本の日記」(β版)として正式公開する次第です(2020年1月)。この場を借りて、志良堂さんには心からの感謝をお伝えしたいと思います。

日記の読み解きには、一人の書き手の日記を時系列に読む「つづけ読み」(通読)と、同時期に綴られた複数の書き手の日記を比較して読む「ならべ読み」(併読)があります。検索システムにより、この両方の読み解きを促進できる環境を実現したいというのがそもそもの狙いです。

このデータベースが、近代日本をめぐる諸研究領域および一般的関心に応え、過去を生きた人々の生命の証に繋がる契機となり、延いては歴史理解の深化の一助になるならば、この上ない喜びです。

今後は更なる予算を獲得した上で、明治、大正、昭和戦前期の日記を中心に収録件数を増やし、検索機能を充実する計画です。以下、現状のデータベースの概要についてご紹介いたします。

【データ化項目の概要】
主として以下の項目を設け、日記一件のデータを取りました:
・収録書名、出版社、出版年月日
・カバー、帯、そで、前書き等から分かる日記の概要
・日記のタイトル
・記入期間
・記入者の生年月日、執筆開始時の年齢、ジェンダー、社会的属性
これらに加え、日記の執筆地、日記のキーワード(学生生徒、戦場、獄中、病床)なども取りましたが、現時点では公開データベースには含めていません。今後、追加の検索機能として実装できればと考えています。また、現状では誤入力によるデータの不備も残っている可能性がありますが、適宜、修正をして参ります。

【件数に関する考え方】
一冊に複数の日記を収録する場合は、それぞれを一件と数え、データ化しました。同じ書き手による複数の時期の日記を収めた書籍もあれば、戦時下の日記(特に8月15日)など、多数の書き手による日記を収めた書籍もあります。一冊中の複数日記は、データベース上では枝番号で管理していますが、現状では検索結果には表示されません。

【収録日記の概要】
福田氏のコレクションは著名人から庶民まで多様な書き手の日記を含み、ジャンルの硬軟も様々です。しかし日記資料の保管場所や作業上の都合、データ化が済んでいない日記もあります。またコレクションは膨大ですが、ある分野では著名な日記が漏れていることもあるかと思います。データベースを網羅的と謳わず、副題に「福田秀一氏蒐集のコレクションに基づく」と限定したのはそのためです。

2016年3月、日記コレクションの予備調査時の写真です。

 

2. 「近代日本の日記帳」コレクションのご紹介

福田秀一氏の日記資料コレクションから、明治以降の手書きの日記帳(計492点)を目録化し、「近代日本の日記帳」コレクションと称して公にしました(田中祐介・土屋宗一・阿曽歩「近代日本の日記帳——故福田秀一氏蒐集の日記資料コレクションより」『アジア文化研究』第39号、2013年3月)。

田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』では、「近代日本の日記帳」コレクションに収められた日記資料のいくつかを考察の対象としました。総論(田中祐介)では太平洋戦争期の少女と青年、第一章(柿本真代)では明治期の高等小学校生、第三章(新藤雄介)では昭和期の公務員、第一〇章(堤ひろゆき)では大正期の教育実習生の日記をそれぞれ扱っています。

画像をクリックすると、「近代日本の日記帳」コレクションの目録がご覧頂けます。このコレクションは、目録作成後は国際基督教大学に保管していましたが、現在はご遺族の許諾のもと、当プロジェクト責任者である田中が管理しています。コレクションに関するお問い合わせは、nikkiken.modernjapan[アットマーク]gmail.comまでお願いいたします。