第38回研究会(特別回)のご案内

やっと秋を実感する最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは11月25日(土)に開催いたします、第38回研究会のご案内を差し上げます。

今回は特別回として、岡田林太郎さんのご著作『憶えている: 40代でがんになったひとり出版社の1908日』を取り上げます。版元であるコトニ社の後藤亨真さんによる特別講演として、内容はもとより、制作の背景についてもお話いただきます。

岡田林太郎さんは若くして勉誠出版社の社長をお務めになられたあと、2018年に独立し、ひとり出版社としてみずき書林を立ち上げました。以後は、戦時下のウォッチェ島で餓死した佐藤冨五郎氏の日記を取り上げた大川史織編『マーシャル、父の戦場』をはじめとして、魅力的な書籍を数々世に出されました。当研究会には第1回目(2014年9月20日)にご出席くださり、みずき書林として独立後は毎回楽しみにご参加くださいました。

旺盛にお仕事を続ける最中、2021年の夏の終わりに、岡田さんはスキルス胃がんのステージ4であることが発覚しました:記事1記事2

以後、闘病生活を続けながら、変わらず出版活動も続けておいででした。数度の入院生活を経て、残念ながら2023年6月の退院後に更新した「もう一度ちからを」と題した記事を最後として、7月3日に永眠されました。

岡田さんは今年になってから、コトニ社後藤さんの勧めもあり、書籍化を目指して、ご自身のブログを再読して思い、考えたことを文章にまとめられていました。このたびの研究会では、11月に刊行される岡田さんのご著作を取り上げ、追悼の念を心中に懐きながらも、「日記を再読しての自己語り」という当研究会の関心事にまさしくあったテクストとして、その内容を検討します。岡田さんと親しかった方々も、またそうでない方々も、ぜひ奮ってご参加ください。

ありがたいことに岡田さんは、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、2022年)についても、長文の記事を書いてくださいました:記事1記事2

後編の記事に、岡田さんは以下のように書かれています。
「佐藤冨五郎が忠良な兵士・よき家庭人・日記を綴る人として自己を位置付けようとしたように、僕もまた、出版社経営者・編集者・ブログを書く人として自己を位置付ける。そのようなものとして僕は本書に接し、冗長な文章を連ねる。
そして僕の残した本や文章もまた、いつか「近現代日本を照射する」材料になるのだとしたら、それは歴史のなかの無数のひとりとして、愉快なことだ。」

岡田さんの言葉のとおり、その遺された言葉にむきあい、ひとりの人間の生きた証から書くことの意味を考え、議論をする「材料」とさせていただきましょう。そのような機会を「愉快」と思っていただけることを想像しつつ。

今回はこの書籍を様々な立場からどう読めるか、特別講演に続いてコメントをいただく時間を設けます。日記に学ぶ立場からは島利栄子さん(女性の日記から学ぶ会代表)、文学研究の立場からは小澤純さん(慶應義塾志木高等学校教諭)、岡田さんと面識がなく、ブログを通読された新しい読者の立場からは北崎花那子さん((早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年)、そしてひとり出版社の立場からは堀郁夫さん(図書出版みぎわ代表)からお話をいただきます。その後、全体討議に移ります。

みなさまこのたびもぜひ奮ってご参加ください。

研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですがご記入いただければ幸いです(フォームでの受付は11月22日まで、懇親会にご参加くださる場合は11月11日までにご記入ください)

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

なお、12月9日(土)には通例会として第39回研究会を開催いたします。こちらも開催の一ヶ月ほど前に、ご案内を差し上げます。

田中祐介


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「近代日本の日記文化と自己表象」第38回研究会(特別回)

【開催日時】
 2023年11月25日(土) 15:00-17:40

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 開催趣旨(15:00-15:25)
「岡田林太郎さんの「近代日本の日記文化と自己表象」研究会」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
  ※参加者自己紹介の時間を含めます
2. 特別講演(15:30-16:30)
「「編集者・岡田林太郎の日記を読むーーあるひとり出版社の仕事と日常と病い」(後藤亨真、コトニ社代表)
3. 様々な立場からどう読むか(16:40-17:10)
 日記に学ぶ立場から:島利栄子(女性の日記から学ぶ会代表)
 文学研究の立場から:小澤純(慶應義塾志木高等学校教諭)
 新しい読者の立場から:北崎花那子(早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年)
 ひとり出版社の立場から:堀郁夫(図書出版みぎわ代表)
5. 全体討議(17:10-17:40)

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