国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント――学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」のご案内

11月とは思えない陽気も続きますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは12月7日(土)、8日(日)に国立歴史民俗博物館で開催いたします、国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント——学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」についてご案内を差し上げます。

この企画は、2022年度より田中祐介(明治学院大学・国立歴史民俗博物館)が代表を務めております国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」の主催事業であり、「近代日本の日記文化と自己表象」研究会との共催として開催いたします。今年度が事業の最終年度にあたりますので、これまでの研究成果を公に問う場としても位置づけます。

これまで国立歴史民俗博物館においでくださったことがある方も、初めての方も、ぜひご来場ください。ハイブリッド開催ですので、現地参加が難しい場合はオンラインでもご参加いただけます。事前申込制(12月6日の15時締切)ですので、ご参加いただける場合はこちらからご登録ください(リンクが機能しない場合、恐れ入りますが添付チラシのQRコードをご利用ください)

全体プログラムと構成は以下のとおりです。

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国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント——学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」
総合司会:三上 喜孝(国立歴史民俗博物館教授)

【12月7日(土)】
13:00-13:10 開催趣旨(田中祐介、明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
13:10-15:45 研究報告(各25分)
 「1930年代朝鮮、初等教育の後―「載寧(チェリョン/さいねい)商業学校」生徒の世界を想像する―」(樋浦郷子、国立歴史民俗博物館准教授)
 「冷戦期のエゴドキュメントから考える「近代東アジア」―サハリン朝鮮人・柳時郁の「山中半月記」」(宋恵媛、大阪公立大学教授)
 「17世紀の朝鮮における戦争と結婚の形態の変化」(金貞雲、慶北大学校専任研究員)  コメント:鄭在薰(慶北大学校教授)
 「羨望と屈辱のあいだ―近代満洲における中国人の「東北」旅行記」(高媛、駒澤大学教授)
 「陸季盈日記が描く台湾農村における皇民化」(陳怡宏、国立台湾歴史博物館研究員)
15:50-16:30 討論 ディスカッサント:田中祐介(明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館客員准教授)

【12月8日(日)】
10:00-11:15 研究報告(各25分)
 「三田村鳶魚「日記」にみる吉原研究」(横山百合子、国立歴史民俗博物館名誉教授)
 「「私は田舎の乙女です」 ̶雑誌『處女の友』(1918年創刊)にみる自己を綴る農村の若年女性の登場̶」(徳山倫子、京都大学准教授)
 「彼女の書き机―エゴドキュメントを補助線に読む松本恵子の自己語り」(北崎花那子、早稲田大学大学院博士後期課程、「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」リサーチ・アシスタント)
11:20-11:50 討論 ディスカッサント:柿本真代(京都華頂大学准教授)
11:50-13:30 昼休憩
13:30-13:45 全体コメント1 吉岡拓(明治学院大学准教授)
13:45-14:00 全体コメント2 田中祐介(明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
14:10-15:00 総合討論
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広報用のチラシも添付いたしますので、ご関心のありそうなお知り合いにご周知いただければ幸いです。

みなさまとこの度も学びの場と時間を共有できますこと、心より楽しみにしております。

第42回研究会のご案内

ようやく過ごしやすくなってきた最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは10月12日(土)に開催いたします、第42回研究会のご案内を差し上げます。

今回は西川祐子さん(京都文教大学名誉教授)の追悼企画でもあります。『日記をつづるということ』の著者である西川さんは、大変残念なことに今年6月12日にご逝去されました。

同書は日記の内容分析だけではなく、書くという習慣の形成、「国民教育装置」としての日記の位置づけ、書く媒体である日記帳の体裁も分析に含めるなど、現在進める「日記文化」研究の重要かつ貴重な先行研究であり、多くのことを学びました。西川さんのご研究がなければ、「日記文化」研究の進め方も全く違ったものになったことでしょう。

今回はまた、2014年9月20日に第1回研究会を開催した、当会の10周年の節目ともなります。私が「日記文化」研究を始まる背景には、日記資料を蒐集されていた恩師・福田秀一氏(国文学研究資料館名誉教授、国際基督教大学元教授)の資料コレクションと著作がありました。西川さんのご研究とあわせ、研究活動の礎を確認し、さらなる展開を構想する機会としたいと思います。

このたびの企画は日本中世の日記研究を推進される松薗斉さん(愛知学院大学)と協議して決定しました。松園さんが長年運営される「日本人と日記」研究会の初回の話者もまた、西川祐子さんでした。松薗さんは、日記研究の立場から見た西川さんのご研究の意義と課題について、ご報告くださる予定です。

田中は上述の通り、研究会の来し方を総括し、さらなる展開を構想すべく、新たな研究の諸案を提示したいと思います。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが10月9日(水)までにご記入いただければ幸いです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

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「近代日本の日記文化と自己表象」第42回研究会

【開催日時】
 2024年10月12日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「西川祐子『日記をつづるということ』を読み返して——その意義と残した課題」(松薗斉、愛知学院大学文学部歴史学科教授)
「「日記文化」研究の礎を確かめ、更なる展開を構想する——西川祐子『日記をつづるということ』・福田秀一『文人学者の留学日記』の意義を再考しながら」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)

第41回研究会のご案内

今年の連休もあっという間でしたが、みなさまお元気にお過ごしでしたしょうか。
このたびは6月2日(日)に開催いたします、第41回研究会のご案内を差し上げます。

このたびは特集企画「1945年の日記を続け読み、並べ読む」です。現在制作を進める書籍に収録する日記に基づき、編者のうち有志(大川史織、小澤純、宋恵媛、中野良、田中祐介)により、日記の読み解きにより得た知見をみなさまにご報告いたします。

なお、今回の研究会は、田中が2022年度より代表を務める国立歴史民俗博物館の共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」(https://www.rekihaku.ac.jp/research/list/2022_rekihaku_y_tanaka.html)第9回研究会との共催として開催いたします。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面でご参加くださるみなさまには、懇親会のご参加希望も事前に伺います。

お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが5月30日(木)までにご記入いただければ幸いです。なお、懇親会にご参加くださる場合は、会場予約の都合上、5月19日(日)までにご記入くださると大変ありがたいです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第41回研究会
共催:国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」

【開催日時】
 2024年6月2日(日) 13:00-18:00

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第(予定)】
特集:「1945年の日記を続け読み、並べ読む」
1. 企画趣旨(13:00-13:20)
「戦争経験を当事者不在の時代に繋ぐために」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)

2. 参加者自己紹介(13:20-13:40)

3. 研究発表と討論1(13:50-15:40)
「「感情」から読み解く銃後の日記史料群」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
「無二の記録が開かれるとき――金順吉(キム・スンギル)の出張日記、佐藤冨五郎の戦場日記、シディングハム・デュアの抑留日記と出逢う」(大川史織、国立公文書館アジア歴史資料センター調査員)
「出版された日記を長い時差の中で読む――佐藤冨五郎日記を軸に――」(小澤純、慶應義塾志木高等学校教諭)

4. 研究発表と討論2(16:00-17:30)
「少年たちの朝鮮、1945年:日本人と朝鮮人の中学生日記から」(宋恵媛、大阪公立大学大学院文学研究科教授)
「『大文字』の日記と『小文字』の日記―軍事エゴドキュメント並べ読みのケーススタディ―」(中野良、国立公文書館アジア歴史資料センター研究員)

5. 総合討論(17:30-18:00)

第40回研究会のご案内

三寒四温、というには不規則な寒暖が続く最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは3月17日(日)に開催いたします、第40回研究会のご案内を差し上げます。

第40回目の記念となる今回も、ありがたいことにお二人のご報告者をお迎えすることができました。

お一人目は、早稲田大学文化構想学部で助手をお務めになる野間龍一さんです。日中戦争を事例として、官僚や警察官たちがどのようにして公私ともに戦争を受け入れ、兵士として出征し、「銃後」の民衆を動員したのかについて、日記や書簡、陣中へ宛てた寄書などのエゴ・ドキュメントを通してご考察くださいます。

もうお一人は、『無数のひとりが紡ぐ歴史』にもご寄稿くださった鬼頭篤史さんです。昭和戦後期のサラリーマンの手帳文化を扱われた同書のご論考を踏まえ、昭和期の商社マンが使用したビジネス手帳一式について、史料の全貌と特徴を紹介しながら、サラリーマンの実践的な手帳文化についてご考察くださいます。

研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面でご参加くださるみなさまには、懇親会のご参加希望も事前に伺います。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが3月14日(木)までにご記入いただければ幸いです。なお、懇親会にご参加くださる場合は、会場予約の都合上、3月3日(日)までにご記入くださると大変ありがたいです

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第40回研究会

【開催日時】
 2024年3月17日(日) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「官僚・警察官のエゴ・ドキュメントから見える日中戦争 」(野間龍一、早稲田大学文化構想学部社会構築論系助手)
「サラリーマンの情報整理ー昭和期の或る商社マンのビジネス手帳を中心に」(鬼頭篤史、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学)

岡田林太郎さん(みずき書林代表)のこと――「近代日本の日記文化と自己表象」第38回(特別会)の開催報告に代えて

2023年11月25日(土)に開催した「近代日本の日記文化と自己表象」第38回研究会では、岡田林太郎『憶えている——40代でがんになったひとり出版社の1908日』(コトニ社、2023年)を題材として取り上げました。研究会の内容を踏まえながら、2023年7月3日(月)にご逝去されたみずき書林代表の岡田林太郎さんとの出会いと交流、そして『憶えている』のことを記しておきたいと思います。

研究会冒頭では、岡田林太郎さんと「近代日本の日記文化と自己表象」研究会の関わりについて私(田中祐介)がお話しました。岡田さんと私が知り合ったのは、2013年11月、国際基督教大学で開催された国際学術大会の会場でした。私は共催団体である同大学アジア文化研究所のスタッフとして会の運営補助につき、岡田さんは大会を後援する勉誠出版の社長として、社員の堀郁夫さんを伴っての参加でした。

名刺とともに、同年3月に公開に至った「近代日本の日記帳」の目録を岡田さんにお渡ししました。そうしたところ、岡田さんは即座に「1945年の日記に関する企画があるんですが、やりませんか」と誘ってくださいました。初対面で大きな企画を投げてくる人だなと、なかば面食らいつつも嬉しく、しかし当時の私は「日記文化」研究のプロジェクトを立ち上げてもおらず、その企画を引き受ける能力も人的繋がりも不十分であるとの自覚があり、即答することはできませんでした。

幸い翌年に科学研究費助成事業が採択された私は、岡田さんにその旨をご報告し、企画について相談する機会をもちました。私が会員である「女性の日記から学ぶ会」にご協力を仰いではと、岡田さんをお誘いして定例会に参加したこともありました。2014年9月20日(土)に開催した「近代日本の日記文化と自己表象」第1回研究会にも、懇親会までご参加くださいました。

勉誠出版の社長として多忙極まる岡田さんとの交流は、そこで一度途絶えました。以後、私は「日記文化」研究を進め、田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017年)にまとめました。その書評会も済み、一息ついた気分であった2018年4月、岡田さんが3月に勉誠出版の社長を退き、「ひとり出版社」としてみずき書林を立ち上げたと耳にして驚きました。

2018年の夏、みずき書林から大川史織編『マーシャル、父の戦場』が刊行されることを知り、研究会でも周知したいと思い、久しぶりに岡田さんにご連絡をしたところ、嬉しいことに第18回研究会(9月15日)に参加くださり、約4年ぶりの再会を果たしました。

再会からまもない2018年9月29日(土)には、渋谷アップリンクにて、大川史織さん監督の映画「タリナイ」が上映を迎えました。その日に映画を鑑賞し、居合わせた岡田さんと初めて二人で飲む機会を得ました。気が合ったというか、話も弾み、以後はことあるごとに(あるいは何もなくとも)二人で飲み、語る機会をもつようになりました。研究会にもほぼ毎回、懇親会も含めてご参加くださり、交流は深まりました。

2020年に新型コロナ禍を迎えてからは、お互いに不自由さをかこちながら、戦時下の女学生の日記を読み解くオンライン研究会にご参加いただき、可能な機会には閑散とした飲食店の隅で2人で飲むなどしていました。藤岡みなみさんが開催したオンラインイベントに、2人でアバターで参加したこともありました(写真参照)。

2021年の夏に岡田さんが病を得てからも、交流は続きました。その時の様々な思い出については、またの機会に譲るとしましょう。

私が最後に岡田さんに面会できたのは2023年6月27日(火)でした。みずき書林に赴き、30分ほど会話をして、前年度から本格的に岡田さんと始動した出版計画についても、助言をいただきました。柄にもないことですが、病床の岡田さんの手に手を重ねたところ、もう一方の手を重ねてくださいました。あとから大川さんが「田中さんが手を握ってくれましたよ、と岡田さんが話していましたよ」と伝えてくださいましたが、何となく気恥ずかしく、また握ったりしては本当に最後になるような気もしたので、つい「握ってはいません、重ねただけです」と答えてしまいました。

岡田さんが執筆を進めていた『憶えている』を題材とした研究会を開催しようと思い立ったのは、告別式から1ヶ月ほど経った2023年8月の頃です。追悼の念はもちろんありながらも、「日記を再読しての自己語り」という研究会の関心事にまさしく適した題材として、あくまで研究会の形式で開催したいとの思いがありました。ありがたいことに配偶者である岡田裕子さん、出版元であるコトニ社の後藤享真さんのご賛同も得られ、特別回として11月25日(土)に開催することになりました。

おかげさまで当日は、対面オンラインあわせて40名を越える盛会となりました。講演企画として、後藤享真さんには書籍の内容はもちろん、出版に至る経緯についても詳しくお話いただきました。体調が安定しつつも多くの仕事を手放してしまった岡田さんに、新しく専念できる仕事があればとの思いから、ご自身での執筆を提案するに至ったというエピソードには、後藤さんの真摯で温かいお人柄がとてもよく表れていると思います。

ご多用のなかコメントをくださった島利栄子さん(「女性の日記から学ぶ会」代表)、小澤純さん(慶應義塾志木高等学校教諭)、北崎花那子さん(早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年)、堀郁夫さん(図書出版みぎわ代表)にも御礼を申し上げます。「お元気でいたらどれほど多くのことを教えていただけただろう」と悔しそうに語ってくださった島さん。生前の岡田さんと面識のない立場から「来年も再来年もその先も、岡田さんの言葉は読者に意味を発することをやめない」と遺された言葉の力を実感させてくださった北崎さん。ブログに基づく書籍が生まれた意味を詳しく説きながら、岡田さんが弱さ、小ささ、遠さにこだわった出版人であったことを再確認くださった小澤さん。岡田さんと同じひとり出版社の立場として書籍に勇気づけられるとしながら、様々に開かれた読みの可能性に触れてくださった堀さん。みなさん本当にありがとうございました。

ご来場くださったみなさんにも、重ねて感謝を申し上げます。企画をした人間として、より多くの方々にご発言いただけるよう、もっと時間に余裕をもたせるべきだったとの反省はありますが、意味ある時間をお過ごしいただけたとしたら、大変嬉しく思います。

研究会の最後では、僭越ながら司会者である私みずから、『憶えている』の書名を話題にしました。岡田さんはこの書名について、「僕自身がこの5年間のことを憶えている、という意味があるのはもちろんですが、読者が僕がいなくなった後も僕のことを憶えていてほしい、という願いも込められています」と書いています

しかし悲しいことに、人間の記憶は忘却と表裏一体です。憶えていたい意思と、忘れてしまうことへの恐れは、時間が経過し、遠ざかる過去に対して抱く一つの感情の別名とも言えます。岡田さん自身、『憶えている』の中では、「よく憶えている」(239頁)と書くこともあれば、ほんの一年ほど前のブログについても「詳しいことはなにも憶えていない」(366頁)と書くこともありました。気がついたら忘れてしまっている。そんな儚い人間の記憶を頼りにした書名にして、岡田さんの「憶えていてほしい」との願いは果たされるのでしょうか。

人間は忘れてしまう。しかし一方で、言葉や事物を手がかりとして思い出すことはできます。『憶えている』でも言及される『わたしは思い出す』(2023年、remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織])は、まさにそのような想起の語りが主題となる作品です。岡田さんが自身の想起の言葉を重ねた『憶えている』も、将来にわたり、岡田さんのことを思い出し、記憶を鮮やかにする手がかりになるでしょう。そうであるならば、「憶えている」より「思い出す」の方が、記憶の深い領域に迫るものとして優れた主題なのではないか、などと岡田さんに揶揄まじりで聞いてみたい気がします。

しかし結論から言えば『憶えている』の書名は、やはりこのままで良かったのだと思うのです。岡田さんのブログでこの書名に初めて接した際、即座に想起したのは、大川史織さんの初監督映画「タリナイ」の広告に掲げられた「忘れた環礁は、憶えている」の一文でした。一方が忘れてしまい、他方が憶えているという非対称性を表すこの文言は、日本とマーシャル諸島の歴史と記憶に関して熟考を促す映画の本質を穿った表現として、深く心に残りました。

「環礁」を「忘れた」主体が日本側であるとして、いつ、なぜ、どのように忘れてしまったのか。具体的には、国、当事者、国民全体、どの水準で忘れてしまったのか、といった問いを多岐に生み出します。

一方で、「憶えている」の主体は「環礁」です。「環礁」を一つの空間とみなすならば、そこにはマーシャルの景色——空や海、土地があり、人々の喜怒哀楽や生活があります。空間には時間が常に流れ、歴史があります。そのように時間的な奥行きのある空間においての「憶えている」とは、個人の記憶を超えた、いわば集合的な記憶です。それも強い誰かが意図した作為的な記憶ではなく、景色や事物、そして無数の人々の心の中に、様々な濃度と色合いにより刻印され、遍在する記憶と言えるでしょう。そのような意味での集合的な記憶は、時間の経過とともに堆積し、厚みのある層を成して、容易に失われることはありません。

話を『憶えている』の書名に戻せば、人間は忘れてしまうが、思い出すことはできる。ではなぜ、そもそも思い出すことができるのか。それは普段は必ずしも意識しない記憶の深層で、強固に憶えているからこそだと言えます。そこまで考えてみると、書名の『憶えている』は、「忘れた環礁は、憶えている」とも重なり、共鳴しながら、時間の経過とともに堆積する厚い記憶の層に届く文言として、相応しく思われてくるのです。実際に岡田さんがどれほど自覚的に、あるいは無意識的にも「憶えている」を選んだのかは確かめようがありませんが、私自身はこのように書名を受けとめました。

『憶えている』をめぐる集合的で遍在的な記憶とは、少々月並みな物言いだとしても、岡田さんを憶えている人々が様々にもつ岡田さんの思い出の集合です。書籍に留められた岡田さんの言葉に向きあい、ともに語りあうことで、忘れていたはずの遠い記憶を思い出すこともあるでしょう。話し手の記憶が分有され、聞き手の新たな記憶となることもあるでしょう。あるいは生前の岡田さんを知らない新しい読者は、岡田さんという人を想像し、語ることで、それ自体が新しい記憶となり、「憶えている」ことに繋がるでしょう。『憶えている』がこの先、未知の読者に出会いながら、岡田さんを思い、語り、思い出すための大切な手がかりとして読まれ続けることを願います。

研究会の場では時間切れで言えないままでしたが、今一度、追悼の気持ちを前面に出すならば、林太郎さん本人に対しては、記憶は時に薄らぐとしても、君が遺してくれた言葉によっていつでも思い出すことができる。そして思い出すことができるのは、記憶の深層でしっかりと憶えているからこそで、決して君のことを忘れはしない。だから安心していてほしい。そう伝えたいと思います。

まずは当面、岡田さんと意気投合した10年越しの出版企画を早期に結実すべく、10年前には想像もできなかった人と人との繋がりに感謝しながら、制作を進めてゆく所存です。

以上、長文の投稿となりましたが、『憶えている』に触発され、日記やブログという日々の記録もそうですが、思い考えたことを記録しておく意味と大切さを実感し、ここに言葉として留めておきます。

2023年12月27日
田中祐介

第39回研究会のご案内

急に冷え込むようになりましたが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは12月9日(土)に開催いたします、第39回研究会のご案内を差し上げます。

今回の研究会は、田中祐介(明治学院大学・国立歴史民俗博物館)が代表を務めます国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」の第7回研究会との共催として開催いたします。

研究報告はお二方にお願いすることができました。
お一人目は、早稲田大学大学院文学研究科に在籍する石川かれんさんです。石川さんは明治大正期の日記体の小説をご研究されており、今回は水野葉舟の作品を題材にご報告くださいます。取り扱う作品集『響』(第5版)は国立国会図書館デジタルコレクションで全文が閲覧できます:https://dl.ndl.go.jp/pid/887987
特にこのうち「忘却」「手」「某月某日」が日記体の小説となりますので、ご参加くださるみなさまはお目通しいただければ幸いです。またこの書の「序」(デジタルコレクションでは「標題紙」の目次に収録)は水野の文学を考える上で重要な内容とのことですので、あわせてご参照ください。

もうお一人は、神戸大学の長志珠絵さんです。長さんは近年、神戸を中心とした空襲・戦災資料のアーカイブに取り組まれています。その成果の一部を『神戸から・神戸へのてがみー疎開児童と家族の1945年』(2019年)、『空襲下の神戸ー日々の記録から』(2022年)等として公開されてきました(どちらも「神戸空襲を記録する会」による刊行)。このたびのご報告では、アジア太平洋戦争末期の兵庫と神戸で綴られた日記資料を中心的に取り扱うとともに、疎開先との往復書簡もご紹介くださるとのことです。

どちらのご報告も大変楽しみにしております。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですがご記入いただければ幸いです(フォームでの受付は12月6日まで、懇親会にご参加くださる場合は11月27日までにご記入ください)

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第39回研究会
(国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」第7回研究会との共催として)

【開催日時】
 2023年12月9日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「日記体の小説を書く/読むこと――水野葉舟『響』および「北村の日記」における回想と忘却の自己語り」(石川かれん、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程)
「空爆下の日々を綴る―アジア太平洋戦争末期・空爆下の兵庫/神戸―」(長志珠絵、神戸大学国際人間科学部教授)

第38回研究会(特別回)のご案内

やっと秋を実感する最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは11月25日(土)に開催いたします、第38回研究会のご案内を差し上げます。

今回は特別回として、岡田林太郎さんのご著作『憶えている: 40代でがんになったひとり出版社の1908日』を取り上げます。版元であるコトニ社の後藤亨真さんによる特別講演として、内容はもとより、制作の背景についてもお話いただきます。

岡田林太郎さんは若くして勉誠出版社の社長をお務めになられたあと、2018年に独立し、ひとり出版社としてみずき書林を立ち上げました。以後は、戦時下のウォッチェ島で餓死した佐藤冨五郎氏の日記を取り上げた大川史織編『マーシャル、父の戦場』をはじめとして、魅力的な書籍を数々世に出されました。当研究会には第1回目(2014年9月20日)にご出席くださり、みずき書林として独立後は毎回楽しみにご参加くださいました。

旺盛にお仕事を続ける最中、2021年の夏の終わりに、岡田さんはスキルス胃がんのステージ4であることが発覚しました:記事1記事2

以後、闘病生活を続けながら、変わらず出版活動も続けておいででした。数度の入院生活を経て、残念ながら2023年6月の退院後に更新した「もう一度ちからを」と題した記事を最後として、7月3日に永眠されました。

岡田さんは今年になってから、コトニ社後藤さんの勧めもあり、書籍化を目指して、ご自身のブログを再読して思い、考えたことを文章にまとめられていました。このたびの研究会では、11月に刊行される岡田さんのご著作を取り上げ、追悼の念を心中に懐きながらも、「日記を再読しての自己語り」という当研究会の関心事にまさしくあったテクストとして、その内容を検討します。岡田さんと親しかった方々も、またそうでない方々も、ぜひ奮ってご参加ください。

ありがたいことに岡田さんは、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、2022年)についても、長文の記事を書いてくださいました:記事1記事2

後編の記事に、岡田さんは以下のように書かれています。
「佐藤冨五郎が忠良な兵士・よき家庭人・日記を綴る人として自己を位置付けようとしたように、僕もまた、出版社経営者・編集者・ブログを書く人として自己を位置付ける。そのようなものとして僕は本書に接し、冗長な文章を連ねる。
そして僕の残した本や文章もまた、いつか「近現代日本を照射する」材料になるのだとしたら、それは歴史のなかの無数のひとりとして、愉快なことだ。」

岡田さんの言葉のとおり、その遺された言葉にむきあい、ひとりの人間の生きた証から書くことの意味を考え、議論をする「材料」とさせていただきましょう。そのような機会を「愉快」と思っていただけることを想像しつつ。

今回はこの書籍を様々な立場からどう読めるか、特別講演に続いてコメントをいただく時間を設けます。日記に学ぶ立場からは島利栄子さん(女性の日記から学ぶ会代表)、文学研究の立場からは小澤純さん(慶應義塾志木高等学校教諭)、岡田さんと面識がなく、ブログを通読された新しい読者の立場からは北崎花那子さん((早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年)、そしてひとり出版社の立場からは堀郁夫さん(図書出版みぎわ代表)からお話をいただきます。その後、全体討議に移ります。

みなさまこのたびもぜひ奮ってご参加ください。

研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですがご記入いただければ幸いです(フォームでの受付は11月22日まで、懇親会にご参加くださる場合は11月11日までにご記入ください)

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

なお、12月9日(土)には通例会として第39回研究会を開催いたします。こちらも開催の一ヶ月ほど前に、ご案内を差し上げます。

田中祐介


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「近代日本の日記文化と自己表象」第38回研究会(特別回)

【開催日時】
 2023年11月25日(土) 15:00-17:40

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 開催趣旨(15:00-15:25)
「岡田林太郎さんの「近代日本の日記文化と自己表象」研究会」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
  ※参加者自己紹介の時間を含めます
2. 特別講演(15:30-16:30)
「「編集者・岡田林太郎の日記を読むーーあるひとり出版社の仕事と日常と病い」(後藤亨真、コトニ社代表)
3. 様々な立場からどう読むか(16:40-17:10)
 日記に学ぶ立場から:島利栄子(女性の日記から学ぶ会代表)
 文学研究の立場から:小澤純(慶應義塾志木高等学校教諭)
 新しい読者の立場から:北崎花那子(早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年)
 ひとり出版社の立場から:堀郁夫(図書出版みぎわ代表)
5. 全体討議(17:10-17:40)

第37回研究会のご案内

まだまだ残暑が厳しいこの頃ですが、みなさまお変わりなくお過ごしでしょうか。
このたびは9月17日(日)に開催いたします、第37回研究会のご案内を差し上げます。

今回も二本立ての研究報告です。
お一人目は、2023年3月に東京学芸大学連合大学院で博士号を取得された真辺駿さんです。博士論文のご成果に基づき、明治大正期に神奈川県で小学校教師を務めた長島重三郎の日記や回想録を題材として、国家の期待する教師像を意識しながら、地域の現実に対峙しつつ教師となる姿を分析してくださいます。

もうお一人は、大阪電気通信大学名誉教授の小田康徳さんです。小田さんは、今年8月に琥珀書房より刊行されました『陸軍少将岡原寛 戦中・戦後日記―演説の名手が生きた銃後と戦後―』)の監修をお務めになりました。このたびは書籍の内容はもちろんのこと、同書の刊行に先立つ10年におよぶ研究会活動の概要についてもご報告くださいます。また、これまで取り組まれたきた多数の日記翻刻についてもご紹介くださるとのことでした。当日は、琥珀書房の山本捷馬さんもご参加くださる予定です。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。

ご多用のところ恐縮ですが、ご参加をご希望される場合、恐れ入りますが9月14日(木)までに受付フォームよりご登録いただければ幸いです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第37回研究会

【開催日時】
 2023年9月17日(日) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「明治・大正期における小学校教師にとっての「地域」と「修養」―教師個人の史料を手がかりに― 」(真辺駿、明治学院大学ほか非常勤講師)
「『陸軍少将岡原寛 戦中・戦後日記』―日記からみる敗戦前後の高級将校の主観とその生活―」(小田康徳、大阪電気通信大学名誉教授)

第36回研究会のご案内

夏の到来を間近に控えた時期となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。このたびは7月22日(土)に開催いたします、第36回研究会のご案内を差し上げます。

今回もお二方にご報告をお願いすることができました。お一人目は情報科学芸術大学院大学の高森順子さんです。高森さんは2010年から「阪神大震災を記録しつづける会」の事務局長をお務めになり、災害体験の手記集を出版される活動を続けておいてです。このたびのご報告では、今年3月に刊行されたご著書『震災後のエスノグラフィ 「阪神大震災を記録しつづける会」のアクションリサーチ』(明石書店)を踏まえたご報告をいただきます。

もうお一人は、「手帳類」プロジェクトの代表をお務めになる志良堂正史さんです。志良堂さんのご活動もまもなく10年を迎えます。目下、ご準備中のご著書の構想に基づきつつ、これまでの活動の総括と今後の展望についてご報告いただきます。志良堂さんのプロジェクトについては、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史』の第15章「個人の記録を未来へ継承する」(対談記録)をご参照ください。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。なお情勢の変化を踏まえ、当研究会の開催形態は当面「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面での集いを貴重な交流の場と位置づけつつ、遠方でお住まいの方々にも引き続きご参加いただきやすい環境を整えて参ります。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですがこちらからご記入いただければ幸いです(受付は7月19日まで)。

以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第36回研究会

【開催日時】
 2023年7月22日(土) 13:30-17:30

【開催形態】
対面を基本としたオンライン併用(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 研究活動の報告と展望(13:30-14:00)
2. 研究発表(14:10-17:30)
「手記集を綴じる技術と記憶継承ー『震災後のエスノグラフィー『阪神大震災を記録しつづける会』のアクションリサーチ』から」(高森順子、情報科学芸術大学院大学産業文化研究センター研究員)
「手帳類を鍛え直す―プロジェクトを100年続けるために―」(志良堂正史、個人事業主/手帳類プロジェクト代表)

第35回研究会のご案内

年度末も近づいて参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。
このたびは3月4日(土)に開催いたします、第35回研究会のご案内を差し上げます。
今回は研究報告と、特別講演の二本立てです。

研究報告の部では、清華大学大学院の肖羿さんより、国木田独歩『欺かざるの記』に関してご報告いただきます。肖さんは『欺かざるの記』の修養日記としての側面に着目し、当研究会の「日記文化」研究もご参照くださったご論考を『跨境』に掲載されました。今回は、このご論考を踏まえた発展的なご報告になる予定です。

特別講演の部では、AHA! [Archive for Human Activities]の世話人である松本篤さんをお招きし、AHA!のご活動に関して、特に最新の出版物である『わたしは思いだす』に即しながらお話いただきます。同書の特設サイトでは、全文公開もなされています。東日本大震災を挟む期間に育児日記を綴った書き手(かおりさん)による、自身の日記の再読と追憶の記録は、「〈震災〉ではなく〈私〉を主語にした4018日の点描、想起と忘却の生活史」と位置づけられます。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですがこちらからご記入いただければ幸いです(受付は3月1日まで):

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第35回研究会

【開催日時】
 2023年3月4日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
ハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-15:40)
「「修養日記」としての国木田独歩『欺かざるの記』――同時代言説に基づく試論」(肖羿、清華大学大学院日本語学科博士課程)
3. 特別講演(16:00-17:30)
「11年間の育児日記を再読して 回想録『わたしは思い出す』制作の現場から」(松本篤、AHA! [Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ])