「データベース 近代日本の日記」(β版)の公開

明治から現代までの日記を、執筆期間、記入者氏名、ジェンダー、収録書名から検索できる「データベース 近代日本の日記」(β版)を公開しました。

2006年に急逝された福田秀一氏(国文学研究資料館名誉教授・国際基督教大学元教授)は、数千点にのぼる日記関連資料を蒐集されました。そのうち、2006年までに出版された幕末期以降の活字化日記を対象として、データベース化の作業を行い、登録件数は現在のところ、約850件に至りました。

このたび、志良堂正史さん(プログラマー、「手帳類」プロジェクト代表、https://techorui.jp)のご協力により、研究プロジェクト「近代日本の日記文化と自己表象」のウェブサイトに、検索システムを実装する運びとなりました。試験運転期間を経て、正式公開する次第です。この場を借りて、志良堂さんには心からの感謝をお伝えしたいと思います。

日記の読み解きには、一人の書き手の日記を時系列に読む「つづけ読み」(通読)と、同時期に綴られた複数の書き手の日記を比較して読む「ならべ読み」(併読)があります。検索システムにより、この両方の読み解きを促進できる環境を実現したいというのがそもそもの狙いです。

このデータベースが、近代日本をめぐる諸研究領域および一般的関心に応え、過去を生きた人々の生命の証に繋がる契機となり、延いては歴史理解の深化の一助になるならば、この上ない喜びです。

データベース公開までの経緯と、現状の概要については、こちらをご参照ください。

「近代日本の日記データベース」の公開準備

当研究プロジェクトの一環として、明治以降に綴られ、出版された日記のデータベース化を進めています。まずは戦時下の日記から、そして現在では、戦後日本の日記を対象としています(明治から昭和戦中期はその後に)。データベースは検索可能な形で一般公開できるよう、サンプルデータの500件を入れ、専門家の協力を得ながら、まずはβ版としての公開を目指して試行錯誤しています。

試しにサンプルデータに基づき、「1945年8月」を指定して検索すると、現状では190件がヒットします。

検索した結果はこの画像のように表示されます。各項目につき、日記の概要とともに、「記入者氏名」「性別」「生年月日」「日記記入開始時の年齢」「記入期間」「社会的立場」等が表示されます。「記入場所」もデータでは取っていますが、公開前にもう少し整理が必要でしょう。

まだ日記の数も増えますし、作家の日記など著名で含まれていないものもあります。データは「記入開始日」と「記入終了日」で取っているため、例えば8月15日の日記を見ようとして、ヒットした日記に当日の記述があるとは限りません。

検索結果の個別データの表示は、ひとまず以下のような感じです(明村宏『お父さんが子供で戦争のころ』毎日新聞社、1972) 

項目名はデータ入力時のままですので、「職業、学校名」など、まだ整理と更新の必要があります。

出版された日記には、同一人物による異なる時期の日記や、複数名や大勢の日記を集めたアンソロジーもあります。データベース化に際しては、収録された個別の日記を独立したデータとして取りました。そのため例えば河邑厚徳編『昭和二十年八月十五日 夏の日記』(角川文庫、1995年)の一冊は、全109冊、すなわち全109件のデータとして扱います。一例を掲示すれば以下の通りです。

入力漏れもあるでしょうし、入力済みのデータにも訂正・更新すべき点は多々あるかと思いますが、幅広い利用環境を実現するために、準備を進めて参ります。また公開の暁には、当ウェブサイトでご案内いたします。

最後の写真はデータベース化作業の模様(2018年1月)。2016年3月に試験的な実施をし、その後は『日記文化から近代日本を問う』(2017年12月)の刊行後から本格的に取り組んでいます。協力者は入れ替わりもありながら、20代から40代が中心です。もう作業を離れた方々もいますが、心から感謝しています。