第23回研究会のご案内

12月14日(土)に開催いたします第23回研究会につき、ご案内申し上げます。

今回は「特集:取り遺された研究リソース 直木賞作家・榛葉英治の日記から」と題した特集企画です。早稲田大学の和田敦彦さんを企画者として、榛葉英治日記の読み解きに携わってきた中野綾子さん(明治学院大学)、河内聡子さん(東北大学)、そして田中の計4名が発表を務めます。

榛葉英治は小説『赤い雪』で1958年に直木賞を受賞しました。しかし現在ではあまり知られず、その作品のほとんどが新刊で入手できません。榛葉の日記と作品を手がかりに、今この作家を扱うことで、何を明らかにできるかを考えます。

今回もみなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会はどなたでもご参加いただけますが、会場の都合と資料の部数確保のため、お手数ですが事前に下記アドレスまでご連絡頂ければ幸いです:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第23回研究会

【開催日時】
 2019年12月14日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
 明治学院大学白金キャンパス 1号館8階81会議室

【研究会次第】
 1. 報告と展望(13:30-14:00)
   2019年9月27日、28日開催シンポジウムの開催報告
   「近代日本の日記資料データベース」の第一次公開報告
   新刊紹介:細谷昴『小作農民の歴史社会学』(御茶の水書房、2019)
   今後の出版計画と研究企画

 2. 研究発表(14:10-17:30)
 【特集:取り遺された研究リソース 直木賞作家・榛葉英治の日記から】
  「榛葉英治日記 研究の経緯と基本情報」(和田敦彦、早稲田大学教授)
  「逡巡と決心の長期反復から時代を読む 榛葉英治日記からみる戦後小説メディアの変動」(田中祐介、明治学院大学専任講師)
  「榛葉英治『乾いた湖』と映画化 日記の記述から」(中野綾子、明治学院大学助教)
  「釣魚礼讃 「釣り」を書くことの文学的意識と、メディア的需要をめぐって」(河内聡子、東北大学専門研究員)

※会の終了後、希望者は懇親会へ

2019年度シンポジウムの開催報告

2019年9月28日(土)、29日(日)に開催しました学際シンポジウム「近代日本を生きた『人々』の日記に向き合い、未来へ継承する」は、おかげさまで延べ約100名がご参加下さる盛会となりました。ご来場くださったみなさま、ありがとうございました。また、ご関心をお持ちくださったみなさま、心より感謝申し上げます。3年間の科学研究費助成事業の締めくくりとしても、学びの多い、意義深い2日間となりました。この成果は活字化して残すべく、次なる作業に取り掛かっています。

3年前のシンポジウムが終了した後、研究会はしばしの休息期間をいただきました。が、今回は年末の12月14日(土)にも開催します! 近日中に詳細をご案内差し上げます。

『日記文化から近代日本を問う』総論のWeb公開(期間限定)

2019年9月28日(土)、29日(日)に開催するシンポジウム「近代日本を生きた『人々』の日記に向き合い、未来へ継承する」に先立ち、田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017)の総論「研究視座としての『日記文化』——史料・モノ・行為の三点を軸として」をPDF公開(期間限定予定)します。総論では「史料としての日記」「モノとしての日記」「行為としての日記」を総称して「日記文化」と呼ぶこととしました。

今年9月のシンポジウムの各部は、この三つの視座からの考察をそれぞれ深めるべく構成しました。第1部「日記帳と手帳の文化史に向けて」は「モノとしての日記」に、第2部および第3部「自己をつづることの近代」は「行為としての日記」に、第4部「個人記録に基づく戦争体験の再検証と未来への継承」は「史料としての日記」にあたります。

この機会にお目通し頂き、当プロジェクトの問題意識、成果と課題を知って頂ければ大変嬉しく思います。また総論では、本書に収録した全17本の論考にも言及しました。ご関心のある論考は、本書をお手に取ってご一読頂ければ幸甚です。

総論は下記の書影をクリックすればご覧頂けます。

2019年度シンポジウム開催のご案内

研究プロジェクト「近代日本の日記文化と自己表象」では、これまで科学研究費助成事業の一環として、定期的に研究会を開催して参りました。2017年度からは、「活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の『日記文化』の実態解明」(若手研究B)の研究題目で助成を得て、活動を続けています。

このたび、事業の成果に基づき、より大きな情報発信の機会として、2019年9月28日(土)と29日(日)の二日間、下記の通りシンポジウムを開催する運びとなりました。参加費は無料で、どなたでもご参加頂けますので、ぜひお気軽にご来場ください。事前申し込みは必須ではありませんが、印刷資料を十分にご用意するために、ご参加の旨をご一報頂けると助かります:nikkiken.modernjapan[アットマーク]gmail.com(代表:田中祐介)。またはこちらのお申し込みフォームをご利用ください。

シンポジウムでは総論に続く計14本の研究報告に加え、特別対談、映画上映、展示企画を設けます。

特別対談は、今年で活動23年を迎えた「女性の日記から学ぶ会」代表の島利栄子さんと、「手帳類」プロジェクトの代表である志良堂正史さんにお願いしました。

映画上映は、大川史織監督による『タリナイ』(https://www.tarinae.com)です。同作品は2019年3月には、アメリカのデンバーでも上映されました。

展示企画は「女性の日記から学ぶ会」の協力を得て「高度経済成長期の日記」展をシンポジウム会場で開催します。加えて、美術大学の現役大学生による、日記の読み解きを主題とした小展示企画もご用意いたします。

以上の企画を含むシンポジウムの概要については、引き続き当ページにてご紹介する予定でおります。みなさま、ぜひ奮ってご来場ください。正式なポスターとチラシが完成いたしましたので掲載いたします(9/2追記)。簡易版のチラシもあわせてご参照ください。

シンポジウムに先立ち、田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017)の総論「研究視座としての『日記文化』——史料・モノ・行為の三点を軸として」をPDF公開(期間限定予定)します(9/5追記)。シンポジウムで特別上映をする映画『タリナイ』の広報チラシ(片面)も出来上がりましたので掲示します(9/8追記)

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学際シンポジウム

近代日本を生きた「人々」の日記に向き合い、未来へ継承する

2019年9月28日(土)、29日(日)
明治学院大学白金校舎、本館10階大会議室
特別上映 映画『タリナイ』(大川史織監督)
同時開催「高度経済成長期の日記」展(「女性の日記から学ぶ会」協力)


9月28日(土) 13:00-18:40(開場12:30)
13:00-13:05
開会の辞

13:05-13:25
総論1
「『人々』はいかに、そしてなぜ、日記を綴ってきたか:根源的な問いから日記文化研究を展望する」(田中祐介、明治学院大学)

13:30-15:35
第1部 日記帳と手帳の文化史に向けて  
司会進行:大貫俊彦(千葉工業大学)
「夏期休暇と子どもの日記帳 明治・大正期における定着と展開」(柿本真代、仁愛大学)
「女性と家計簿の近代 モノとしての家計簿の役割にみる」(河内聡子、東北大学)
「昭和戦後期の日本のサラリーマンをめぐる手帳文化」(鬼頭篤史、京都大学)
「手帳類プロジェクトの取り組み 見物から研究へ、私的な記録がひらく可能性」(志良堂正史、「手帳類」プロジェクト代表)

15:35-15:55
ティーブレイク

15:55-17:35
第2部 自己をつづることの近代 教育制度編
  司会進行:新藤雄介(福島大学)
「『六週間現役兵日誌』における軍隊経験 小学校教員はいかにして兵士にならなかったか」(堤ひろゆき、上武大学)
「農村の『模範処女』としての自己表象 戦前・戦中期における県農会立女学校の生徒・卒業生作文に着目して」(徳山倫子、関西学院大学)
「植民地期台湾における綴方教育の展開と教員 『台湾教育』と『第一教育』に着目して」(大岡響子、東京大学大学院)

17:35-17:45
展示企画の紹介
「高度経済成長期の日記展の概要と意義」(吉見義明、中央大学)
「未知の人々の日記を読み、私注をつける」(山田鮎美、武蔵野美術大学学部生)

17:45-18:00
ティーブレイク

18:00-18:40
特別対談
島利栄子(「女性の日記から学ぶ会」代表)・志良堂正史(「手帳類」プロジェクト代表)


9月29日(日)10:00-18:30(開場9:30[午前]、12:30[午後])
10:00-11:55
特別上映 映画『タリナイ』(大川史織監督) 会場:明治学院大学アートホール

12:00-13:00
ランチブレイク

13:00-13:20
総論2
「『人々』の生きた証を留め、活かし、未来へ繋ぐために」(田中祐介、明治学院大学)

13:25-15:05
第3部 自己をつづることの近代 真実と虚構編  司会進行:中野綾子(明治学院大学)
「 自己記述の物語化における取捨選択と変容 漆芸家生駒弘のタイ滞在日記と自伝の比較から」(西田昌之、チェンマイ大学・国際基督教大学)
「自己を書く日記/自己を書く書簡 中村古峡史料群の研究プロジェクトより」(竹内瑞穂、愛知淑徳大学)
「水上勉文学における自己語りの諸相」(大木志門、山梨大学)

15:05-15:25
ティーブレイク


15:25-17:30
第4部 個人記録に基づく戦争体験の再検証と未来への継承  司会進行:中野良(国立公文書館アジア歴史資料センター)
「飢える戦場の自己をつづりぬく 佐藤冨五郎日記における書くことの意思」(田中祐介、明治学院大学)
「映画『タリナイ』上映から一年」(大川史織、映画監督)
「届かなかった手紙 エゴ・ドキュメントのアーカイブズとしての病床日誌」(中村江里、慶應義塾大学)
「戦争体験から高度成長期体験へ 「青木祥子日記」の検討から」(吉見義明、中央大学)

17:30-17:45
ティーブレイク

17:45-18:25

総合討論

18:25-18:30
閉会の辞

「近代日本の日記データベース」の公開準備

当研究プロジェクトの一環として、明治以降に綴られ、出版された日記のデータベース化を進めています。まずは戦時下の日記から、そして現在では、戦後日本の日記を対象としています(明治から昭和戦中期はその後に)。データベースは検索可能な形で一般公開できるよう、サンプルデータの500件を入れ、専門家の協力を得ながら、まずはβ版としての公開を目指して試行錯誤しています。

試しにサンプルデータに基づき、「1945年8月」を指定して検索すると、現状では190件がヒットします。

検索した結果はこの画像のように表示されます。各項目につき、日記の概要とともに、「記入者氏名」「性別」「生年月日」「日記記入開始時の年齢」「記入期間」「社会的立場」等が表示されます。「記入場所」もデータでは取っていますが、公開前にもう少し整理が必要でしょう。

まだ日記の数も増えますし、作家の日記など著名で含まれていないものもあります。データは「記入開始日」と「記入終了日」で取っているため、例えば8月15日の日記を見ようとして、ヒットした日記に当日の記述があるとは限りません。

検索結果の個別データの表示は、ひとまず以下のような感じです(明村宏『お父さんが子供で戦争のころ』毎日新聞社、1972) 

項目名はデータ入力時のままですので、「職業、学校名」など、まだ整理と更新の必要があります。

出版された日記には、同一人物による異なる時期の日記や、複数名や大勢の日記を集めたアンソロジーもあります。データベース化に際しては、収録された個別の日記を独立したデータとして取りました。そのため例えば河邑厚徳編『昭和二十年八月十五日 夏の日記』(角川文庫、1995年)の一冊は、全109冊、すなわち全109件のデータとして扱います。一例を掲示すれば以下の通りです。

入力漏れもあるでしょうし、入力済みのデータにも訂正・更新すべき点は多々あるかと思いますが、幅広い利用環境を実現するために、準備を進めて参ります。また公開の暁には、当ウェブサイトでご案内いたします。

最後の写真はデータベース化作業の模様(2018年1月)。2016年3月に試験的な実施をし、その後は『日記文化から近代日本を問う』(2017年12月)の刊行後から本格的に取り組んでいます。協力者は入れ替わりもありながら、20代から40代が中心です。もう作業を離れた方々もいますが、心から感謝しています。

「近代日本の日記文化と自己表象」第22回研究会のご案内

7月6日(土)に開催いたします第22回研究会の詳細が決まりましたので、ご案内申し上げます。

今回のご報告は、お三方にお願いすることになりました。
まずは前回研究会でもアナウンスした真辺駿さん(東京学芸大学大学院)と、堤ひろゆきさん(上武大学)です。

真辺さんは、小学校教師である長島重三郎(1878-1967)の日記を題材に、長島の自己意識、社会意識を審らかにしてくださると同時に、当時にあって「教師」とはいかなる存在で、地域社会にどのような役割を果たすべきものと位置づけられたかを、社会教育史の文脈で検討くださいます。

堤さんは、大正期の六週間現役兵の日記を扱ってくださいます。これは、田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017)のご論考で検討された大正期の教育実習日記(「近代日本の日記帳コレクション」所収、資料番号39-1:http://diaryculture.com/database/)の続編となるものです(資料番号39-2)。他の六週間現役兵の日記と比較しながら、日記の点検者である教官とのやりとりの意味を含め、この日記の特徴を考察してくださいます。

更に今回は、卒業論文の制作に取り組まれている立教大学文学部の長藤菜々さんにもご報告いただくこととしました。研究会の前半に特別枠を設け、有明淑の日記に基づく太宰治の作品「女生徒」について、研究の成果をご報告いただきます。他者の視線による「私」の揺らぎ、世界と「私」とのあいだに差し挟まれるさまざまな「フィルター」の機能、遠くにあって手の届かないものにしか「幸福」を感じることができない主人公の感受性などを、明らかにしてくださるそうです。

今回はご報告をお三方にお願いするに伴い、研究会の開始時刻を30分早め、13時としました。ご来場の際には、この点にご注意ください。

今回もみなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会はどなたでもご参加いただけますが、会場の都合と資料の部数確保のため、お手数ですが事前に下記アドレスまでご連絡頂ければ幸いです:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)

それでは、会場でお目にかかることを心より楽しみにしております。

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「近代日本の日記文化と自己表象」第22回研究会

【開催日時】
 2019年7月6日(土) 13:00-18:00

【開催場所】
 明治学院大学白金キャンパス 1号館8階81会議室

【研究会次第】
 1. 報告と展望(13:00-13:20)
   「近代日本の日記資料データベース」の第一次公開
   2019年9月28日、29日開催シンポジウムの詳細
 
 2. 研究発表1(13:30-14:40)
   「幸福は一夜遅れてやってくる––太宰治「女生徒」論––」(長藤菜々、立教大学文学部学部4年生)   
 3. 研究発表2(14:50-18:00)
   「大正期における社会教育と小学校教師―「長島重三郎日記」を手がかりに―」(真辺駿, 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程)
   「六週間現役兵の軍隊経験-『軍隊日誌』の記述と体裁から-」(堤ひろゆき, 上武大学ビジネス情報学部専任講師)

※会の終了後、希望者は懇親会へ

「近代日本の日記文化と自己表象」第21回研究会のご案内

第20回を記念する前回研究会には沢山のみなさまにご来場いただき、心より御礼申しあげます。5月11日(土)に開催いたします第21回研究会の広報準備が整いましたので、ご案内申し上げます。

今回のご報告は、徳山倫子さん(日本学術振興会)と西田昌之さん(チェンマイ大学・国際基督教大学)のお二人にお願いしました。

徳山さんは、県農会立女学校の生徒・卒業生作文を取り上げてくださいます。県農会立女学校は農村の「模範処女」の養成を目的として、1920-30年代に複数県に設置されたもので、徳山さんはそうした学校の生徒・卒業生の作文を題材に、農村の未婚女性の自己表象について検討くださいます。

西田さんは、漆芸家・生駒弘のタイ滞在時の日記(1957-1961)と、約20年後に執筆された自伝を比較してくださいます。日記に綴った経験を、いかに「自己の人生の物語」として綴り直したか。自己記述の物語化に伴う取捨選択と変容について、詳細にご検討くださいます。

今回もみなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会はどなたでもご参加いただけますが、会場の都合と資料の部数確保のため、お手数ですが事前に下記アドレスまでご連絡頂ければ幸いです:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)

それでは、会場でお目にかかることを心より楽しみにしております。

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「近代日本の日記文化と自己表象」第21回研究会

【開催日時】
 2019年5月11日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
 明治学院大学白金キャンパス 1号館8階81会議室

【研究会次第】
 1. 報告と展望(13:30-14:00)
   AASの参加報告
   「女性の日記から学ぶ会」23周年のつどい(6月1日)のご案内
   旧制高等学校記念館・夏期教育セミナーのご案内
   「近代日本の日記資料データベース」進捗
   2019年9月開催シンポジウムの基本計画

 2. 研究発表(14:10-17:20)
   「農村の「模範処女」としての自己表象―1920-30年代における県農会立女学校の生徒・卒業生作文を題材に―」(徳山倫子, 日本学術振興会特別研究員PD)
   「自己記述の物語化における取捨選択と変容:漆芸家生駒弘のタイ滞在日記と自伝の比較から」(西田昌之, チェンマイ大学文学部日本研究センター助教授・国際基督教大学アジア文化研究所研究員)

※会の終了後、希望者は懇親会へ

AAS in Denverでの『タリナイ』上映

2019年3月21日から24日まで米国のデンバーで開催されたAAS(Association for Asian Studies)の年次大会に参加してきました。AASは米国では最大規模のアジア研究学会で、3〜5名程度で構成される発表パネルが400近く(!)あるという大きさです。 当プロジェクト(「近代日本の日記文化と自己表象」)では、これまで活動成果として、AASの支部的学会であるASCJ(Asian Studies Conference Japan)や、開催地をアジアに限定したAAS in Asiaで発表してきました(ASCJ 2015, AAS in Asia 2016)。今回は発表のお務めはなく、研究交流の機会としての参加です。

AAS in Denver会場のシェラトンホテル

AASでは毎年、研究発表のほかに、ドキュメンター映画の祭典であるFilm Expoが同時開催されます。会場の受付には、ブックレットも用意されていました。 審査を経て、23本の作品が会期中に上映されます。今回からの新しい試みとして、上映を見逃してもオンデマンドで観られるサービスもありました。研究発表と映画上映が重なっていることも多く、嬉しい配慮です。

Film Expoの最終日、23日の17:15から、大川史織監督の『タリナイ』が上映されました。 大川さんには、2018年12月に開催した「近代日本の日記文化と自己表象」第19回研究会でご講演いただきました。ありがたいことに、アップリンク渋谷での上映の最終日、ゲストとしてお招き下さったという縁もあります。

大川さんは、『タリナイ』の監督であるとともに、『マーシャル、父の戦場』(みずき書林、2018)の編者でもあります。餓死した日本兵の日記という貴重な歴史資料を明るみに出す意義はもちろんのこと、読者が日記本文に向きあう助けとなる様々な仕掛けが極めて魅力的で、刊行を知ったときには大変刺激を受けました。日記本文をこの企画の骨格とするなら、その肉づけの見事さにより、多くの読者に読まれうる一冊として仕上がったのだと思います。

過去に存在した人々の生きた証とも言える日記ですが、いざ翻刻・刊行しても、多くの読者を得ることはなかなか難しいことです。 『マーシャル、父の戦場』は、日記資料を刊行する際の、一つの理想形であるように思われました。

AASの展示ホールでは、日本の出版社の出展も多く、『マーシャル、父の戦場』も日本出版貿易株式会社のご厚意により、展示されました。

『タリナイ』監督の大川史織さん

映画の上映は、国外では初の機会です。映画をすでに何度か鑑賞した身としては、会場の反応がどのようなものであるか、楽しみでした。観られる、読まれる環境が違えば、おのずから反応も異なる。制作者や、国内の鑑賞者(もちろんそれ自体多様ですが)とは違う受取り方も当然あるでしょう。

日記の書き手である佐藤冨五郎さんは、軍隊生活ならではの抑制された、漢字カタカナ混じりの文体で、日々の出来事を綴りました。 抑制的な文体には、しかし個性を殺すべき一兵士には似つかわしくない、極めて私的な喜怒哀楽と、家族への思いも滲み出ます。

抑制された––––軍隊組織の中ですから、抑圧されたと言った方が適切でしょう。抑圧的な環境の中で生まれた文体だからこそ、滲み出る個人の声は、痛切に響きます。それが比較的シンプルな英文に置き換えられ、字幕に現れるとき、どのように響くのか––––そんなことも気になりつつ上映に臨みました。

AAS Film Expo会場

上映開始時には続々と来場者があらわれ、延べ60名ほどが鑑賞したでしょうか。 学会中の上映ですから、研究者や出版業者も多い中、一般参加(Film Expoは無料)も見られました。

幸いなことに、上映を知ったデンバー在住のマーシャル国籍(しかも映画の舞台であるウォッチェ島ご出身)の方々も来場されました。 鑑賞者の映像に見入る姿も印象的で、上映後の大川監督による英語の質疑応答も含め、初の海外上映は、大成功だったと言えます。

質疑応答時、ウォッチェ島出身の来場者を前にして

環境が違えば反応も異なる。興味深かったのは、作中では重要と言える場面での、会場のあちこちから上がった、予期せぬ、しかし真摯な鑑賞から生まれたと言うべき笑いの声でした。

一箇所は、冨五郎さんが日記の中で、「勉君ドウシタカナー」と、2歳のときに別れた息子の勉さんに思いを馳せる場面です(『マーシャル、父の戦場』では211-212ページ)。

画面にはマーシャルの青い海と空を背景に、日記本文が浮かび、中耳炎にかかった幼い勉さんの耳掃除を、冨五郎さんがしてあげたことが回想されます。

この場面で映される美しく青い海と空は、飢えと戦う戦時下のマーシャルの冨五郎さんが見つめ、見上げたものであり、同時に今日のマーシャルを訪れた勉さんたちが、あるいは映画を鑑賞する皆さんが、見つめ、見上げるものでもあります。

遠く空間的に離れた息子を気にかける冨五郎さんの思いは、長い時間の隔絶を超え、あたかも今日の勉さんに届き、勉さんの父への思いと共鳴するかにも感じられます。

同時に、(今日の日本の)鑑賞者は映画を通じ、空間的に隔たり、知らなかったマーシャルを身近に感じながら、この場面では、時間的に隔たり、知らなかった戦争の時代の、ひとりの父の経験と感情を追体験することにもなります。

青い海と空を媒介として、故人の遺した言葉の作用により、隔絶した空間と時間の、様々な経験と記憶が再び繋がり、未来への意味を持ち始めたとも思われる印象的な場面だと思います。私(田中)の学生も、この場面について、「何年経っても忘れない気がする」「言葉で表すのが難しい大きな、初めての感情を抱いた」と記しています。

AASの会場において、この場面で起きた笑いの声は、どのような感情の喚起に由来したのでしょうか。父親と子供の微笑ましいエピソードとして受け取ったのか。父を慕う子の姿を思い浮かべ、可愛らしいと思ったのか。あるいはまた異なる理由か。どのような父と子の物語を、鑑賞者は見出したのか。あいにく上映後は慌しく会場撤収となり、このあたりの確認はできませんでした。

もう一箇所、これは映画の最後に登場するセリフ。これから映画をご覧になる方もおいででしょうから具体的には示しませんが、ここでも、決して否定的ではない、むしろ映画への真摯な反応として、会場の数名から笑いが起きました。日本の上映時には、少なくとも私も、監督である大川さんも経験しなかったことです。環境が違えば反応も異なるとして、物語を締めくくると同時に、鑑賞者に問いを投げかけるセリフ、「コイシイワ アナタガ イナイト ワタシ サビシイワ」の旋律とともに、鑑賞者を再び映画の始まりに連れ戻すようなセリフは、どのような意味を帯びた文言として今回の来場者には受けとめられたのか。

これも、今後の機会があれば、確かめてみたいと思います。

上映後の記念撮影

「近代日本の日記文化と自己表象」第20回研究会のご案内

3月9日(土)に開催いたします第20回研究会についてご案内申し上げます。
当研究会も、おかげさまで第20回を迎えることとなりました。これもひとえに皆様のおかげであると、心よりの感謝を申し上げます。

今回は、宮本温子さん(筑波大学大学院)と鬼頭篤史さん(京都大学大学院)のお二人にご報告いただきます。

宮本さんは、「自己をつづること」の公的実践に関わる問題提起として、明治二十年以降に全国に流通した文芸投書雑誌『文庫』『新声』の記事を分析してくださいます。この二誌が読者に対していかに「地方青年」としての共同体意識を芽生えさせたか、地方青年たちは誌面上でどう「地方」を語り、「地方文壇」に関わったのかが大きなテーマになるとのことです。

鬼頭さんは、サラリーマン規範における手帳文化を扱ってくださいます。近年の手帳ブームには眼を見張るものがありますが、ご報告では、戦前期に形づくられた日本のサラリーマン規範(サラリーマンとはどうあるべきか)を踏まえ、その必須アイテムとも言える手帳に言及されるようになった昭和戦後期を中心に、この主題を論じてくださるとのことです。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会はどなたでもご参加いただけますが、会場の都合と資料の部数確保のため、お手数ですが事前に下記アドレスまでご連絡頂ければ幸いです:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)

【映画『タリナイ』その後】
前回開催の第19回研究会では、『マーシャル、父の戦場』(https://www.mizukishorin.com/marshall)の編者であり、上映中の映画『タリナイ』(https://www.tarinae.com)の監督である大川史織さんはじめ、日記を読み解いた「金曜調査会」(https://www.mizukishorin.com/04-8)の皆さんにご講演をいただきました。

『タリナイ』はその後も各地で上映されていますが、3月21日から24日までデンバーで開催されるAAS(Asociation for Asian Studies)年次大会でのFilm Expo(https://www.eventscribe.com/2019/AAS/agenda.asp?pfp=expo)でも上映が決まりました。また、直近では、2月20日(水)に、高田馬場の「ピースボート東京」でも上映の機会があります(http://peaceboat.org/26204.html)。ご関心があり、見逃された方のために、ご案内申し上げます。

それでは、皆さまに再会できますことを心より楽しみにしております。

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「近代日本の日記文化と自己表象」第20回研究会

【開催日時】
 2019年3月9日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
 明治学院大学白金キャンパス 1号館8階81会議室

【研究会次第】
 1. 報告と展望(13:30-14:00)
   新刊案内:ビュールク・トーヴェ『二代目市川團十郎の日記にみる享保期江戸歌舞伎』  
   映画『タリナイ』のAAS上映
   日記資料を読み解く会の可能性
   「戦場」と「銃後」の日記データベース公開に向けて
   2019年9月開催シンポジウムの概要
   
 2. 研究発表(14:10-17:20)
   「文芸投書雑誌『文庫』『新声』にみられる「地方文壇」の青年の共同体意識と「中央文壇」へのまなざしーー小木曽旭晃と入澤凉月の事例を中心にーー」(宮本温子、筑波大学図書館情報メディア研究科博士前期課程)
   「日本のサラリーマン規範における手帳文化―昭和戦後期を中心に―」(鬼頭篤史、京都大学大学院人間・環境学研究科研修員)

「近代日本の日記文化と自己表象」第19回研究会のご案内

師走を迎え、寒い日々も続きますが皆さまお元気にお過ごしでしょうか。

さて、諸般の調整に時間を要し、ウェブ掲載が遅くなりましたが、
下記の要領で「近代日本の日記文化と自己表象」第19回研究会をご案内申し上げます。

今回は二本のご報告に加え、一年の締めの特別企画として、講演会を開催いたします。

まずは、小泉紀乃さん(奈良女子大学大学院)に、明治大正期の「遺書」についてご報告いただきます。有名な藤村操の「巌頭之感」を中心に、メディア言説上の遺書の生者への働きかけを問題にしてくださいます。

二番目のご報告は、魏晨さん(名古屋大学博士候補研究員)にお願いしました。1930年代の日満綴方使節を題材に、満洲国の子供たちが「内地」をどう眼差し、綴ったかを論じてくださいます。博士論文の内容を踏まえ、新たな知見にも基づいたご報告を頂けるとのことです。

講演会は、前回研究会でご紹介した『マーシャル、父の戦場』(https://www.mizukishorin.com/marshall)の編者であり、上映中の映画『タリナイ』(https://www.tarinae.com)の監督である大川史織さんをお招きし、書籍と映画が生まれるそもそもの前提となった、佐藤冨五郎日記の読み解きのご経験についてお話いただきます。佐藤冨五郎さんは、敗戦近い1945年、ウォッゼ島で餓死しましたが、死の直前まで日記を綴っておいででした。今回は大川さんにお声がけしましたが、嬉しいことに、出版元であるみずき書林代表の岡田林太郎さん、日記を読み解いた「金曜調査会」(https://www.mizukishorin.com/04-8)の皆さんもご参加くださることになりました。

いつも以上に賑やかで充実した会になりそうで、主催者としても、今から楽しみにしております。
ご参加をご希望される方は、会場の都合と資料の部数確保のため、
お手数ですが事前に下記アドレスまでご連絡ください:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)
ご参加される方の人数が把握でき次第、会場をご案内いたします。

田中祐介

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「近代日本の日記文化と自己表象」第19回研究会

【開催日時】
2018年12月22日(土) 13:00-

【開催場所】
明治学院大学白金キャンパス(会場調整中)

【研究会次第】
1. 報告と展望
2. 研究発表
「遺書で語ること、遺書を語ることーー藤村操「巌頭之感」をめぐるメディア言説の暴力性」(小泉紀乃・奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程)
「日満綴方使節と『綴方日本』ーー「満洲国」の子供が<内地>をどう見ていたのか」(魏晨・名古屋大学人文学研究科博士候補研究員)
3. 講演会
「佐藤冨五郎日記を体験するー『マーシャル、父の戦場』刊行をめぐる歴史実践」(「金曜調査会」メンバー:今井勇・大川史織・岡田林太郎・柏原洋太・斉藤涼子・中野良・番定賢治・福江菜緒子)