緊急事態宣言も解除され、第六波は懸念されるものの、ひとまず感染状況が落ち着く日々となりました。みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは、12月11日(土)に開催いたします第31回研究会のご案内を差し上げます。
従来通り、原則的にZoomによるオンライン開催とします。
今回は研究報告の部と、年末特別企画の二部構成です。研究報告の部では、磯部敦さんと鬼頭篤史さんがご報告くださいます。
磯部敦さんは既発表のご論考(磯部敦・小泉紀乃・汪少雯「澤田四郎作『日誌』における「記録」の累積と循環」『叙説』47、奈良女子大学日本アジア言語文化学会、2020.3)を踏まえ、民俗学研究者である澤田四郎作の日記を綴る営みについて、物的側面からアプローチくださいます(当該のご論考を参加者各自にお目通しいただいた上での、通例より短めのご報告となる予定です)。
鬼頭篤史さんは、金物問屋が発行した昭和期の社内報を史料として、従業員一体化を目的とした誘導や指導を従業員がどのように理解し、内面化したかについてご検討くださいます。
以上の研究報告の部に続き、年末の特別企画として、大川史織さんと竹内麻子さんにご報告いただきます。大川さんのご編著『マーシャル、父の戦場』(みずき書林、2018年)には、戦時下のウォッチェ島で餓死した佐藤冨五郎さんの日記全文が掲載されます。この日記が今日にも伝わるのは、戦友の原田豊秋さんが日記を預かり、復員後に冨五郎さんのご家族にお届けしたからでした(原田さんのお手紙はこちらから読めます)。
『マーシャル、父の戦場』の刊行後、原田さんの戦後の足跡を探すも、なかなか手がかりが得られませんでした。このあたりの経緯はみずき書林の岡田林太郎さんのブログをご参照ください)。
そうしたところ、コロナ禍を迎えた2020年に原田さんのご家族が見つかり、今年9月に冨五郎さんのご子息である佐藤勉さんとご家族との対面が果たされることとなりました。対面の模様は、毎日新聞で記事になりました(2021年10月4日朝刊、冒頭部分は無料で読めます:https://mainichi.jp/articles/20211004/ddm/041/040/053000c)
今回の特別企画では、毎日新聞の記事をお書きになられた竹内麻子さんをお招きし、大川さんとともに、原田さん探しの経緯と、果たされた対面をどう受けとめたかについてお話いただきます。個人の日記が散逸せずに伝わることで、後世にどのような繋がりを生んだかという点でも大変興味深いところです。
師走のお忙しい最中とは存じますが、みなさまぜひ奮ってご参加ください。ご参加をご希望される場合、お名前とご所属を明記の上、ご連絡ください:nikkiken.modernjapan(アットマーク)gmail.com(代表:田中祐介・明治学院大学)
今回も多くの皆様のお目にかかれますことを、心より楽しみにしております。
田中祐介
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「近代日本の日記文化と自己表象」第31回研究会
【開催日時】
2021年12月11日(土) 13:00-17:50
【開催場所】
オンライン開催(Zoom利用)
【研究会次第】
1. 報告と展望(13:00-13:30)
2. 研究発表(13:30-16:10)
「日記の現場へ――澤田四郎作の『日誌』記述」(磯部敦、奈良女子大学研究院人文科学系准教授)
「昭和戦前期の会社における従業員一体化の論理の理解と内面化―株式会社湯淺七左衛門商店社内報『湯淺月報』店員寄稿欄を中心に」(鬼頭篤史、京都大学大学院博士後期課程研究指導認定退学)
3. 特別企画(16:20-17:50)
「「届けてくれてありがとう」ーー佐藤冨五郎日記を託された戦友をめぐる歴史実践」(大川史織、映画『タリナイ』『keememej』監督・国立公文書館アジア歴史資料センター調査員, 竹内麻子、毎日新聞社会部)