第48回研究会のご案内

はやくも初夏の気配を感じるこの頃ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは6月6日(土)に開催いたします、第48回研究会のご案内を差し上げます。

このたびもお二人のご報告者をお迎えすることができました。

お一人目は九州産業大学の出木良輔さんです。
大正期の中等国語教育、特に綴方教育に同時代文学はどのような影響を与えていたのか、国木田独歩「武蔵野日記」「小春日記」(「武蔵野」「小春」の抜粋教材)を題材にご検討くださいます。『新撰女子読本』『大正女子国文読本』等の中等国語科教科書の本文と原作本文の比較、ならびに教師用指導書や作文参考書等の分析を通じて、独歩の2作品の教材化がどのようになされ、学習者に提示されたのか明らかにしてくださいます。

もうお一人は東洋大学の尾形大さんです。
近年に完結した『伊藤整日記』全8巻(平凡社、2021〜2022年)は、1952年から1969年までの18年間の日記を収めます。この日記の詳細の読解からはすでに多くの発見があるそうですが、今回は特に伊藤の『日本文壇史』執筆の現場とその周辺をご検討の上、多くの編集者や文学者、文学関係者との交遊関係の整理を通して、伊藤を中心とする戦後の文学者ネットワークの実態を可視化くださる予定です。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面でご参加くださるみなさまには、懇親会のご参加希望も事前に伺います(大学院生・学部生にはディスカウントがあります)。

ご多用のところ恐縮ですが、ご参加くださる場合、お手数ですが6月3日(水)までにお申し込みいただければ幸いです。受付フォームを設けましたので、お手隙の折にご登録ください。

なお、懇親会にもご参加くださるみなさまは、会場予約の都合上、5月23日(土)までにご登録ください(申込状況をみて早めに締め切らせていただく場合がございますので、ご希望の方はぜひお早めにご登録ください)。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第48回研究会

【開催日時】
 2026年6月6日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「大正期における文学作品の日記教材化―国木田独歩「武蔵野」「小春」を例に―」(出木良輔、九州産業大学国際文化学部講師)
「『伊藤整日記』にあらわれた『日本文壇史』連載の現場と文壇的ネットワークの一断面」(尾形大、東洋大学文学部日本文学文化学科教授)

第47回研究会のご案内

まだまだ冷え込が続くこの頃ですが、お元気にお過ごしでしょうか。
このたびは2月23日(月・祝)に開催いたします、第47回研究会のご案内を差し上げます。

このたびもお二人のご報告者をお迎えすることができました。

お一人目は愛知淑徳大学の竹内瑞穂さんです。
前回研究会でご案内しましたように、漱石門下の小説家から精神科医に転身した中村古峡が遺した資料群がデータベース化され、2025年末に公開されました(「中村古峡記念病院所蔵 近代精神療法記録集」)。企画の監修を務めた竹内さんは、患者たちが治療の一環として書かされていた「療養日誌」の分析から判明したことについてご報告くださいます。同時に、精神病患者の医療的記録を公開することの危うさと意義についても触れてくださるとのことです。竹内さんは田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史』(文学通信、2022年)では、第5章「自己を書き綴り、自己を〈調律〉する――中村古峡史料群の「日記」「相談書簡」「療養日誌」」をご執筆くださいました。

もうお一人は駒澤大学の高媛さんです。
ご著書『帝国と観光――「満洲」ツーリズムの近代』(岩波書店、2025年)の成果を踏まえ、戦前における日本人学生の未刊行の満洲旅行日記やスクラップ帳を手がかりに、若年層が帝国観光の言説を内面化しつつ、旅の経験をいかに自己表象として編み上げたのかを検討してくださいます。また、未刊行の旅行手記が帝国観光の言説と個人的経験とが交錯する場であったことを明らかにしてくださるそうです。高媛さんは田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017年)では、第13章「戦前期満洲における中国人青年の学校生活――南満中学堂生の『学生日記』(一九三六年)から」をご執筆くださいました。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合は2月20日(金)までにご登録ください。なお、懇親会にもご参加くださるみなさまは、会場予約の都合上、2月9日(月)までにご登録ください。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第47回研究会

【開催日時】
 2026年2月23日(月・祝) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「〈調律〉の痕跡をひらく――中村古峡資料群のデータベース公開をめぐって」(竹内瑞穂、愛知淑徳大学文学部教授)
「未刊行旅行手記が編む満洲修学旅行――帝国観光と自己表象の交錯」(高媛、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授)

第46回研究会のご案内

冬の到来も近いと思わせる寒さが続きますが、お元気にお過ごしでしょうか。
このたびは12月6日(土)に開催いたします、第46回研究会のご案内を差し上げます。

このたびは『日記文化から近代日本を問う』(笠間書院、2017年)、『無数のひとりが紡ぐ歴史』(文学通信、2022年)のどちらにもご論考をお寄せくださったお二人がご報告をご快諾くださいました。

お一人目は上武大学の堤ひろゆきさんです。
大正期の小学校教員であった中谷勲の教員としての自己形成過程を、中谷の顕彰を意図して教員仲間が編纂・発行した『中谷勲遺稿』所収の日記・書簡の分析により明らかにしてくださいます。特に、キャリア初期の否定的な軍隊経験について取り上げてくださる予定です。

もうお一人は東北工業大学の河内聡子さんです。
遣米使節団の随員・玉蟲左太夫の航海日記『航米日録』を取り扱ってくださいます。玉蟲の見聞や随感、特に公式文書から抜き書きし、家蔵本の「秘書」として編集された「巻八」を中心に、幕末武士が異文化体験を通して感じた「本音」と「建前」を明らかにしてくださいます。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。

ご多用のところ恐縮ですが、12月3日(水)までにご参加の可否(ご参加の場合は参加形態も)をお知らせいただければ幸いです。受付フォームを設けましたので、お手隙の折にご記入ください。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

なお今回は常より開始時刻が30分早くなっておりますので、ご注意ください。

田中祐介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第46回研究会

【開催日時】
 2025年12月6日(土) 13:00-16:50

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:00-13:30)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(13:35-16:50)
「『中谷勲遺稿』所収の日記・書簡における教員としての自己形成過程――大正期「信州白樺派」の社会的文脈に注目して」(堤ひろゆき、上武大学ビジネス情報学部准教授)
「玉蟲左太夫『航米日録』に見る幕末武士の異文化体験――「巻八(秘書)」の分析を中心に」(河内聡子、東北工業大学総合教育センター講師)

第45回研究会(特別回)のご案内

このたびは「近代日本の日記文化と自己表象」研究会の「特別回」に関してご案内を差し上げます。

研究会にもご参加くださっている志良堂正史さんが、今月にご著書『他人の手帳は「密」の味 禁断の読書論』(小学館新書)を刊行されました。

志良堂さんは2016年9月に開催したシンポジウムにご参加くださり、縁が生まれました。
その後、第14回研究会(2017年12月)では、志良堂さんが進める「手帳類」プロジェクトに関してご講演いただきました。

また、2019年9月に開催したシンポジウムでは島利栄子さん(「女性の日記から学ぶ会」代表)との特別対談でご登壇いただきました。
『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(2022年、文学通信)には、ご論考「手帳類プロジェクトの設計と実践―私的なプレイヤーのためのプラットフォームへ向けて」をお寄せくださいました。

直近では、第36回研究会(2023年7月)にて、このたびのご著書の構想を含め、ご報告いただきました。

ご出版を記念して、きたる11月8日(土)に研究会の特別回を開催いたします。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。ご著書をすでに読まれた方も、今後に読まれる方も歓迎いたします。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。

お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが11月5日(水)までにご記入ください(懇親会ご参加の場合は11月1日まで)。

なお、特別回の開催に伴い、次回通常回(12月6日開催)は第46回研究会として開催いたします。
こちらにつきましては、開催の1ヶ月ほど前に詳細をご案内申し上げます。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第45回研究会(特別回)

【開催日時】
 2025年11月8日(土) 15:00-17:40

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金校地、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 趣旨説明及び参加者自己紹介 15:00-15:30
2. 「人々の手帳を通した私的さの探究」(志良堂正史、「手帳類」プロジェクト代表) 15:30-16:10
3. 担当編集者の視点から(竹井怜、小学館) 16:10-16:30
4. 休憩 16:30-16:50
5. 有志による感想と批評 16:50-17:10
6. 全体討議 17:10-17:40

第44回研究会のご案内

まだまだ暑さも和らぐには遠い日々が続きますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは9月13日(土)に開催いたします、第44回研究会のご案内を差し上げます。

2022年度から2024年度まで、国立歴史民俗博物館の共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」を実施しました。このたびご報告いただくのは、共同研究に基づくご論考の準備を進められているお二人です。

お一人目は国士舘大学で非常勤講師をされている魯洙彬(ノ・スビン)さんです。釜山監獄の監獄長も務めた三井久陽の日記に基づき、三井の経歴と活動について分析くださいます。

もうお一人は早稲田大学大学院博士後期課程の北﨑花那子さんです。女性の探偵小説家でもある松本恵子の回顧録を中心的に、自己語りの揺らぎの戦略について論じてくださいます。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが9月10日(水)までにご登録いただければ幸いです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第44回研究会

【開催日時】
 2025年9月13日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「ある監獄官吏の目に映った帝国日本と植民地ー『三井久陽日誌』にみる「植民地官僚」の経歴と活動ー」(魯洙彬、国士舘大学非常勤講師)
「「書く女性」における自己語りの戦略――松本恵子の回顧録「豊平川」を中心に」(北﨑花那子、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員DC2)

『憶えている』から思い出す——新しい読者の立場から岡田林太郎さんに出会う(北﨑花那子さん)

2023年11月25日(土)に開催した「近代日本の日記文化と自己表象」第38回研究会(特別回)は、同年7月3日に逝去された岡田林太郎氏の著作『憶えている——40代でがんになったひとり出版社の1908日』(コトニ社、2023年)を主題として取り上げました。

研究会は多くのご参加者に恵まれ、同書の感想を様々に寄せていただきました。その中で北﨑花那子さん(当時早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年、現在は同博士後期課程2年)は、生前の岡田さんと直接の面識がない「新しい読者の立場」として、同書をどう読み、岡田さんの言葉を受けとめたかを語ってくださいました。

同書の「はじめに」で、岡田さんは「過去のブログを振り返りながら、いま何を考えているかを書くという行為は、未来へ、他者へ向けて思い出を投げかける行為でもあるだろう」と書いています。北﨑さんは面識のない未知の「他者」(読者)の立場から、岡田さんの「思い出」に真摯に応答くださいました。岡田さんと親交を深めていた私(田中祐介)個人にとっては、岡田さんが遺した言葉が、さっそくに未来の読者に届き、受け渡された瞬間とも思われて、感銘を覚えながらお話を聞きました。

逝去から2年目の命日を迎えたこのタイミングで、北﨑さんのご諒解とご協力を得て、当日お話くださった内容を文章化して、以下に掲載いたします。岡田さんの言葉を受けとめた北﨑さんの言葉が、今度はこれを読むみなさまに届き、『憶えている』を開いて岡田さんに再会し、あるいは新たに出会う契機になることを願います。北﨑さんが語るように、本を開くたびに言葉は新たな意味を発し、読者に受け渡されてゆくことでしょう。それは岡田さんが「書くこと」を通じて未来へ投げかけた思い出を、多様な読者が媒介となって、さらに未来へと繋ぐことになるのだと思います。

様々な立場からどう読むか——新しい読者の立場から
 さきほどご紹介いただいたように、私は岡田さんとは面識もなく、岡田さんも私のことは存在自体まったくご存知ではなかったと思います。ですが、日記でめぐる1945年の出版プロジェクトにお手伝いという形で関わらせていただくことになった際に、田中さんのほうから、版元が変わることと合わせて、みずき書林のことや岡田さんのことを簡単にご紹介いただきました。その時、「ブログもあるのでよかったら見てみてください」と教えていただき、このプロジェクトを、どんな人たちがどんな思いで作り受け継いできたのか知りたいという気持ちで、最新のものから遡ってブログを読みました。
 新しい時期の記事には、岡田さんの出版にかける思いなども書き込まれていたので、読んでいてすごく厳かな気持ちになりました。縁が重なりあったのだから、自分もしっかりとプロジェクトに取り組んでいきたいと思ったのが読み始めの印象でした。その後も興味を惹かれて、ブログの記事自体、膨大な数があったかと思うのですが、ごく古い時期の記事まで、遡る形でどんどん読み進めていきました。
 なかでもよく憶えているのは、『夜と霧』を書いたフランクルの、人生の意味についての言葉(ヴィクトール・E・フランクル『それでも人生にイエスと言う』春秋社、1993.12)を大事にして病気と向き合っているという内容の記事です。自分にとっても『夜と霧』はすごく意義深いというか、特別な本だったので。岡田さんが、フランクルの言葉を携えて人生を見つめておられるのだと共鳴して、特別な感慨を覚えたことを田中さんにお伝えした時に、こういった会がいずれあるので、その時に「新しい読者の立場から」ご感想をいただけますか、と言っていただきました。
 ブログを新しい記事から古い記事へ遡って読んでいくと、どんどんお元気だった時期に近づいていくので、最初は日記のプロジェクトのことや出版のことを真摯な気持ちで読んでいたのが、たとえばお料理がすごくお好きなんだ、とか、すごくお酒を飲んでいる日の記録が大量に出てくるとか(笑)、書かれている内容も変わっていって、お会いしたことはないながらに、ご趣味であったりお人柄であったりをなんとなく感じていました。映画がすごくお好きだったということで、タランティーノは人生の青春の映画だと書かれた部分を読んで、いつ頃、どんな風に青春を感じていたんだろうとか、自分もすごくタランティーノが好きなので、もしもお会いする機会があったら、そういった話もできていたのかな、なんて想像も巡らせてしまいました。それこそ、お会いできていたら、学ばせていただけることがたくさんあったんだろうなと思いながら読んでいました。
 『憶えている』をいただいたのはごく最近で、この本の構成は古い方から新しい方へ時が流れていくようになっているので、その時に初めて、順を追って記述を読んでいったんです。時期も空いたので、最初にブログの記事を遡って読んだときとはまた違った体験でした。本になった『憶えている』を改めて読むことで、岡田さんはこういったことを考えておられたんだ、こういったことにもご関心が深かったんだな、と思いながら、ゆっくり岡田さんと出会っていくような気持ちになりました。
 『憶えている』のなかで、保苅実が残した「勇敢で冷静、そして美しくありたいと感じています」という言葉が、岡田さんのなかに引っかかっていたと書かれていたんですが、岡田さんが保苅の言葉から何かを受け取ったことが、自分がいま、岡田さんの言葉から何かを受け取ったことと重なりあうようで、不思議な気持ちを抱いています。保苅の言葉を受けて生まれた、「勇敢に、丁寧に生きていたい」という岡田さん自身の言葉が、岡田さんの言葉として自分の中に根付いてゆく感覚があるんです。
 民俗学の大学院に行く学生にアドバイスをされたというエピソードには、「彼が読むときのために書いておくけれども、学ぶことってかけがえのない生きる目標になる」という言葉が残されていました。勿論この言葉は私に言われた言葉ではなく、本当に全く自分には関係のない言葉なのだけれど、エピソードや言葉が、同じ院生の立場だからか、琴線に触れてしまって、ひどく胸に刺さりました。初めて本を読んだ時、すこし泣いちゃったりもして、普段自分はそんなに涙脆い方ではなく、本や映画を見て涙するということもなかったので、自分でもどうして? と不思議に思ったのですよね。会ったこともないのに、どうしてこんなに届いてしまっているんだろうと考えながら読んでいました。
 岡田さんと会ったことがなくても、目の前に岡田さんがいらっしゃらなくても、岡田さんの言葉自体が意味を発するのをやめることはないんだということを、感覚的に感じています。来年も、再来年も、岡田さんが遺された言葉はずっと意味を発し続けていて、その意味は読者によって違う。また、岡田さんに会ったことのない誰かがこの本を読むかもしれないけれど、その時も同じように、言葉たちは意味をずっと発していて、それを誰かが受け取るということが、これからもあるのだろうという風に思いました。
 『憶えている』の506頁で、岡田さんが、自分の本を面白いと思ってくれる人も一定数いるのかもしれない、自分の本もまた誰かに何かを感じさせるものになっているかもしれない、と少しだけ言及しているんです。本の中では何度も、このブログやこの本は、岡田さんご自身の親しい人だったり、大切な人に向けて書いているもので、ハウツーでも闘病記でもないと明言されていたこともあって、他者である自分がどうしてこんなに強く揺さぶられてしまうのだろうという気持ちがあったのだけれども、この記述を改めて目にして、岡田さんがそうなるかもしれないと思われたとおりに、この本は誰かに何かを感じさせるものに実際になったのだと、そしてその誰かのなかのひとりが私だったのだと、しみじみ感じました。
 ブログを初めて読んだ時に、自分が死に向かうときにも、ここに書かれた言葉を思い出すのではないか、というような予感がしたんです。きっとたくさんのことを思い、考えるだろうけれど、その一つとしてこのブログのことも思い出すのではないだろうか、となんとなく、本当になんとなく思ったことがあったのですが、今はむしろ、もっと日々の中でこの本のことを思い出す機会が増えていくんだろうという予感が強くなっています。たとえば先週は、まだ大川さんの映画『タリナイ』を観たことがなかったのですが、その後、観てから本を読むと、マーシャル諸島の音楽を聴いていたという記述が、一体どんな音楽だったのかすごくよくわかってまた新しい感覚に出会いました。吉田得子日記についても、ブログを読んでいた時には全く知らなかったのですが、つい先日「女性の日記から学ぶ会」の日記の展示で、吉田得子日記の現物を目にした経験がある状態で『憶えている』を読むと、まったく違う印象を受けました。自分が来年再来年と、生きている時間を重ねるごとに、この本を読んで感じることや、共通の引っ掛かりが増えていって、思いを巡らせることもどんどん増えていくんだなと思います。何度も何度も読むたびに、今はまだわからないものも、この本を通していつか、受け取ることができるようになるんじゃないかな、という風にも思っています。
 あまりうまく伝えられなかったのですが、未来の読者としてわたしが岡田さんの言葉が発する意味をこんなにも受け取ってしまったのは、岡田さんご自身がすごく難しい、勇敢に丁寧に生きてゆくということを実行された方であって、その方が遺した言葉だからこそということが大きいのではないかなと思っております。わたしが岡田さんに会うことはもう叶わないけれど、それでも、今よりももっと深く、観念的に本を通じて出会ってゆくということはできるんじゃないかという風に思いながら、今日はお話をさせていただきました。
 拙い話で大変恐縮ではございますが、お話する機会をいただき、本当にありがとうございました。

北﨑花那子

国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント――学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」のご案内

11月とは思えない陽気も続きますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは12月7日(土)、8日(日)に国立歴史民俗博物館で開催いたします、国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント——学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」についてご案内を差し上げます。

この企画は、2022年度より田中祐介(明治学院大学・国立歴史民俗博物館)が代表を務めております国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」の主催事業であり、「近代日本の日記文化と自己表象」研究会との共催として開催いたします。今年度が事業の最終年度にあたりますので、これまでの研究成果を公に問う場としても位置づけます。

これまで国立歴史民俗博物館においでくださったことがある方も、初めての方も、ぜひご来場ください。ハイブリッド開催ですので、現地参加が難しい場合はオンラインでもご参加いただけます。事前申込制(12月6日の15時締切)ですので、ご参加いただける場合はこちらからご登録ください(リンクが機能しない場合、恐れ入りますが添付チラシのQRコードをご利用ください)

全体プログラムと構成は以下のとおりです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
国際研究集会「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメント——学際的・国際的アプローチによる研究成果の報告」
総合司会:三上 喜孝(国立歴史民俗博物館教授)

【12月7日(土)】
13:00-13:10 開催趣旨(田中祐介、明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
13:10-15:45 研究報告(各25分)
 「1930年代朝鮮、初等教育の後―「載寧(チェリョン/さいねい)商業学校」生徒の世界を想像する―」(樋浦郷子、国立歴史民俗博物館准教授)
 「冷戦期のエゴドキュメントから考える「近代東アジア」―サハリン朝鮮人・柳時郁の「山中半月記」」(宋恵媛、大阪公立大学教授)
 「17世紀の朝鮮における戦争と結婚の形態の変化」(金貞雲、慶北大学校専任研究員)  コメント:鄭在薰(慶北大学校教授)
 「羨望と屈辱のあいだ―近代満洲における中国人の「東北」旅行記」(高媛、駒澤大学教授)
 「陸季盈日記が描く台湾農村における皇民化」(陳怡宏、国立台湾歴史博物館研究員)
15:50-16:30 討論 ディスカッサント:田中祐介(明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館客員准教授)

【12月8日(日)】
10:00-11:15 研究報告(各25分)
 「三田村鳶魚「日記」にみる吉原研究」(横山百合子、国立歴史民俗博物館名誉教授)
 「「私は田舎の乙女です」 ̶雑誌『處女の友』(1918年創刊)にみる自己を綴る農村の若年女性の登場̶」(徳山倫子、京都大学准教授)
 「彼女の書き机―エゴドキュメントを補助線に読む松本恵子の自己語り」(北崎花那子、早稲田大学大学院博士後期課程、「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」リサーチ・アシスタント)
11:20-11:50 討論 ディスカッサント:柿本真代(京都華頂大学准教授)
11:50-13:30 昼休憩
13:30-13:45 全体コメント1 吉岡拓(明治学院大学准教授)
13:45-14:00 全体コメント2 田中祐介(明治学院大学専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
14:10-15:00 総合討論
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

広報用のチラシも添付いたしますので、ご関心のありそうなお知り合いにご周知いただければ幸いです。

みなさまとこの度も学びの場と時間を共有できますこと、心より楽しみにしております。

第42回研究会のご案内

ようやく過ごしやすくなってきた最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは10月12日(土)に開催いたします、第42回研究会のご案内を差し上げます。

今回は西川祐子さん(京都文教大学名誉教授)の追悼企画でもあります。『日記をつづるということ』の著者である西川さんは、大変残念なことに今年6月12日にご逝去されました。

同書は日記の内容分析だけではなく、書くという習慣の形成、「国民教育装置」としての日記の位置づけ、書く媒体である日記帳の体裁も分析に含めるなど、現在進める「日記文化」研究の重要かつ貴重な先行研究であり、多くのことを学びました。西川さんのご研究がなければ、「日記文化」研究の進め方も全く違ったものになったことでしょう。

今回はまた、2014年9月20日に第1回研究会を開催した、当会の10周年の節目ともなります。私が「日記文化」研究を始まる背景には、日記資料を蒐集されていた恩師・福田秀一氏(国文学研究資料館名誉教授、国際基督教大学元教授)の資料コレクションと著作がありました。西川さんのご研究とあわせ、研究活動の礎を確認し、さらなる展開を構想する機会としたいと思います。

このたびの企画は日本中世の日記研究を推進される松薗斉さん(愛知学院大学)と協議して決定しました。松園さんが長年運営される「日本人と日記」研究会の初回の話者もまた、西川祐子さんでした。松薗さんは、日記研究の立場から見た西川さんのご研究の意義と課題について、ご報告くださる予定です。

田中は上述の通り、研究会の来し方を総括し、さらなる展開を構想すべく、新たな研究の諸案を提示したいと思います。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが10月9日(水)までにご記入いただければ幸いです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第42回研究会

【開催日時】
 2024年10月12日(土) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「西川祐子『日記をつづるということ』を読み返して——その意義と残した課題」(松薗斉、愛知学院大学文学部歴史学科教授)
「「日記文化」研究の礎を確かめ、更なる展開を構想する——西川祐子『日記をつづるということ』・福田秀一『文人学者の留学日記』の意義を再考しながら」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)

第41回研究会のご案内

今年の連休もあっという間でしたが、みなさまお元気にお過ごしでしたしょうか。
このたびは6月2日(日)に開催いたします、第41回研究会のご案内を差し上げます。

このたびは特集企画「1945年の日記を続け読み、並べ読む」です。現在制作を進める書籍に収録する日記に基づき、編者のうち有志(大川史織、小澤純、宋恵媛、中野良、田中祐介)により、日記の読み解きにより得た知見をみなさまにご報告いたします。

なお、今回の研究会は、田中が2022年度より代表を務める国立歴史民俗博物館の共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」(https://www.rekihaku.ac.jp/research/list/2022_rekihaku_y_tanaka.html)第9回研究会との共催として開催いたします。

みなさまぜひ奮ってご参加ください。研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面でご参加くださるみなさまには、懇親会のご参加希望も事前に伺います。

お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが5月30日(木)までにご記入いただければ幸いです。なお、懇親会にご参加くださる場合は、会場予約の都合上、5月19日(日)までにご記入くださると大変ありがたいです。

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第41回研究会
共催:国立歴史民俗博物館共同研究(基盤研究)「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」

【開催日時】
 2024年6月2日(日) 13:00-18:00

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第(予定)】
特集:「1945年の日記を続け読み、並べ読む」
1. 企画趣旨(13:00-13:20)
「戦争経験を当事者不在の時代に繋ぐために」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)

2. 参加者自己紹介(13:20-13:40)

3. 研究発表と討論1(13:50-15:40)
「「感情」から読み解く銃後の日記史料群」(田中祐介、明治学院大学教養教育センター専任講師・国立歴史民俗博物館特別客員准教授)
「無二の記録が開かれるとき――金順吉(キム・スンギル)の出張日記、佐藤冨五郎の戦場日記、シディングハム・デュアの抑留日記と出逢う」(大川史織、国立公文書館アジア歴史資料センター調査員)
「出版された日記を長い時差の中で読む――佐藤冨五郎日記を軸に――」(小澤純、慶應義塾志木高等学校教諭)

4. 研究発表と討論2(16:00-17:30)
「少年たちの朝鮮、1945年:日本人と朝鮮人の中学生日記から」(宋恵媛、大阪公立大学大学院文学研究科教授)
「『大文字』の日記と『小文字』の日記―軍事エゴドキュメント並べ読みのケーススタディ―」(中野良、国立公文書館アジア歴史資料センター研究員)

5. 総合討論(17:30-18:00)

第40回研究会のご案内

三寒四温、というには不規則な寒暖が続く最近ですが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
このたびは3月17日(日)に開催いたします、第40回研究会のご案内を差し上げます。

第40回目の記念となる今回も、ありがたいことにお二人のご報告者をお迎えすることができました。

お一人目は、早稲田大学文化構想学部で助手をお務めになる野間龍一さんです。日中戦争を事例として、官僚や警察官たちがどのようにして公私ともに戦争を受け入れ、兵士として出征し、「銃後」の民衆を動員したのかについて、日記や書簡、陣中へ宛てた寄書などのエゴ・ドキュメントを通してご考察くださいます。

もうお一人は、『無数のひとりが紡ぐ歴史』にもご寄稿くださった鬼頭篤史さんです。昭和戦後期のサラリーマンの手帳文化を扱われた同書のご論考を踏まえ、昭和期の商社マンが使用したビジネス手帳一式について、史料の全貌と特徴を紹介しながら、サラリーマンの実践的な手帳文化についてご考察くださいます。

研究会の開催形態は、今回も「対面開催を基本としたオンライン併用」とさせていただきます。対面でご参加くださるみなさまには、懇親会のご参加希望も事前に伺います。

ご関心がございましたら、ぜひご参加ください。お申し込みの受付フォームを設けましたので、ご参加くださる場合、お手数ですが3月14日(木)までにご記入いただければ幸いです。なお、懇親会にご参加くださる場合は、会場予約の都合上、3月3日(日)までにご記入くださると大変ありがたいです

今回も多くのみなさまと学びの場をご一緒できますこと、心より楽しみにしております。
以下に当日のプログラムを掲示いたしますので、ご参照ください。

田中祐介

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近代日本の日記文化と自己表象」第40回研究会

【開催日時】
 2024年3月17日(日) 13:30-17:30

【開催場所】
対面を基本としたハイブリッド開催(対面:明治学院大学白金キャンパス、オンライン:Zoom利用)

【研究会次第】
1. 報告と展望(13:30-14:00)
  ※参加者自己紹介の時間を設ける予定です
2. 研究発表(14:10-17:30)
「官僚・警察官のエゴ・ドキュメントから見える日中戦争 」(野間龍一、早稲田大学文化構想学部社会構築論系助手)
「サラリーマンの情報整理ー昭和期の或る商社マンのビジネス手帳を中心に」(鬼頭篤史、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学)